鉄じいがゆく 5_ウエルカムパーティ Part 4 [鉄じい]
私の疲れは最早、体力の限度を遥かに超えていた。
何せ、昼間からのお騒がせ続きである。
ここは、鉄じいが運ばれて来た病院の一室だ。
相変わらず、彼はまだ目を覚まさない。
時計の針は、朝の5時を指そうとしていた。
米屋と電気屋は1時ごろ帰っていった。
電気屋は副業として、市場で鶏肉を仕入れ道端で販売しているし、米屋は、朝早くから店を開けなくてならない。
ボーイも仕事があるので、先程帰ったばかりだ。
ダンとレイはまだ付き合ってくれているが、疲れているのは彼らも同じであろう。
床の上に寝転がって、いつのまにかグーグーと鼾をかきながら、眠っている。
ウトウトしている内に、私も何時の間にか眠ってしまったようだ。
夢の中で鉄じいが、裸で神輿を担ぎながら踊っている。
私はそれを追い掛けようとするのだが、中々鉄じいに追いつかない。
しびれを切らした私は、思いっきりジャンプをして、鉄じいの肩にのしかかった。
よしっ、捕まえた、と思った瞬間に目がさめた。
エアコンのすごく効いた部屋なのに、何故か私の身体は汗でびっしょりと濡れていた。
外はすっかり明るくなっている。
時計を見ると、もう8時になっていた。
ふと鉄じいのベッドを見た。
い、居ない!!
寝ている内に、何処かに移動させられたのだろうか!?
ダンとレイは、相変わらずの大いびきで、眠ったままだ。
私は慌てて起き上がると、急いで病室の外へ出て、ナースセンターに向かった。
ナースセンターにいた看護婦に聞くと、鉄じいのことは、何にも知らないと言う。
私は再び病室へと戻った。
な、なんとそこには、ベッドの上に座ってタバコを吸っている、鉄じいが居た。
『て、て、鉄じい!!!』
私は大きな声で叫んだ。
『て、鉄じい、どないしたん!?、どこに居りましたねん?』
『んっ........何で、ウンコ行っとりましてん』
『ウンコやあらへんがな、どないしたと思うてはんのや、あんた、ここは病院でっせ!!、全然覚えて無いのん?』
『.......いやあ何にも覚えてへん、何でわしが病院に居んとあかんねん!?』
鉄じいは、何も覚えていないらしい。
私が昨日の顛末を、話して聞かせると、
『ああ、それや』
突然鉄じいが、自分の手でひざを叩きながら。大きな声を出して叫んだ。
『それやからどうも、さっきのクソの中に、仰山ガラスの破片があったし、奥歯が痛い思うた。』
鉄じいは、自分の口を大きく開けて、私に見せた。
奥歯が二本、欠けて血がにじんでいた。
口から血が出ていたのはこれだったのだ。
『鉄じい、身体は何ともあらへんの?』
『身体って、わしのけ?』
『じいさん以外に誰がおまんのん!?』
『わしは平気や、そやけど昨日のガラスコップは、えろうごっつーて、よう噛み切れんでなあ、苦戦したがな』
『誰が又、ガラスコップ食え、言いましたねん!?、ええ、じいさん、あんた、来たばっかりでもうこれや、俺ももう面倒見切れん。』
『...............』
『それに、見てみなはれ』
と、寝ている二人を指差して、
『みんな心配して泊まって看病してくれたんやで、救急車も呼んでくれて、あんた一体何考えとんのん!?それからなあ、それから........』
私のあまりの剣幕に鉄じいも、だんだんと夕べのことを、思い出してしてきたのか、声が小さくなり、次第に体も縮めながら云った。
『ごめん、ごめん、本当にもう2度とせんと誓うさかい、堪忍や、堪忍』
鉄じいが、あまりにしおらしくいうものだから、私は一先ず怒りを納めておいて、寝ている2人を起こして、とりあえず、病院を出ることにした。
起きた二人も、鉄じいが何とも無くピンピンしているのを見て、目を白黒とさせている。
病院の支払いもダンに任せたが、ドネーションということで、鉄じいの財布から2000ペソ出させて支払った。
病院を出る前には、看護婦にしっかりと病室でタバコを吸ったことを、咎められたが、鉄じいには、何のことかはわからなかった。
鉄じいの、頭と身体の仕組みは、一体どうなっているのだろうか!?。
結局、私とダンは、仕事を休む羽目になってしまったが、その日の夜、鉄じいが皆に迷惑を掛けた詫びにといって、ビールを沢山買ったので、またまた宴会になってしまった。
みんなも、鉄じいが大事にいたらなかったので、ほっとしたが、次からはきっと腫れ物に触るように扱うに違いない。
その夜は、さすがに暴れるようなことはなかったが、鉄じいが皆より一番沢山食い、ビールを飲んだのはいうまでも無い。
他人のことを、自分の杓子定規に当て嵌めて考えるのは、とんでもない間違いである、と改めて認識してしまった。
次回つづく!!!
TITLE:
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
あっ、更新してた!!
このストーリーの続きが気になって朝一チェックしたのは言うまでない(笑)
そぉそぉ、前から気になってたんですが食べた硝子片は胃や腸に刺さって傷ついたり肛門が切れたりしなんでしょうかね〜。
想像するとゾッとしますが。
鉄じいは凄い御方だ…
by kenny (2007-06-20 23:50)
TITLE: kennyさん
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
それは、私もいちばん心配していたことですが、彼の場合、一度もそういうことは無かったそうです。
倒れたのも、私の想像ですが、興奮から来る、高血圧症では無かったのかと思います。
彼には、何度もそういう経験がありました。
by moimoi (2007-06-21 00:12)
TITLE: 負けたぁ〜
SECRET: 0
PASS: 73cb23db3ce516a5b50467e7196d487c
俺も朝一でのチェックですが時差の関係で…
お騒がせ鉄じいさん、でも,何となく憎めない感じで好感が持てます。(笑
by Leo (2007-06-21 01:14)
TITLE: Leoさん
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
今日は少し更新が早かったのです。
就業時間前に書くのは、結構たいへんです。
わざわざインドネシアから、見て頂いて有難う御座います。
来週からは、新展開しますので、お楽しみに!!!
by moimoi (2007-06-21 01:23)
TITLE:
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
今、拝見しました。
やってくれますね、鉄爺。
続きが早くみたいです。
仕事の面倒なこと忘れられるので。
by yutaro (2007-06-21 03:44)
TITLE: yutaroさん
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
来週月曜日から、新展開に入ります。
女編、仕事編、帰国編と続きます。
何故私が鉄じいの話を書くのか、明日明らかにします。
by moimoi (2007-06-21 03:53)
TITLE: テレビに出したいくらい
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
次から次へと何かをやってくれそうな爺さんですね。勝手ながら年齢は65歳前後と推察しました。
by 富嶽庵 (2007-06-21 04:05)
TITLE: 富嶽庵さん
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
万国ビックリショークラスの、人です。(古)
雑に見えて、結構器用なんですが、短気なので長続きしないので困ります。
あと、時代劇ファンで、尺八もとても上手です。
職人肌の人間なのでしょうね、きっと!!
by moimoi (2007-06-21 05:04)
TITLE:
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
今晩は
いやいや益々快調 鉄じいさんと言うより 鉄人じいさん(失礼)
何か憎めない
好い人?なんだろう
きっと。
次回シリーズ女編、仕事編、帰国編と続きます。
期待値最高です。
by junsbar (2007-06-21 13:36)
TITLE: junsbarさん
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
おはよう御座います。
鉄じいは、暴れん坊だけど、人情にも厚い人ですよ!!。
ただ、行動が人より大分違うので、理解されにくいのかもしれません。
次回の彼の行動に注目してください。
by moimoi (2007-06-21 21:58)