新連載 呂宋漂流記 其の壱 [フィクション]
英造は、マラテの場末にある安宿のベッドの上で、仰向けになり天井を眺めていた。
思えば、嵐のような1週間であった。
全財産を持って、日本で知り合ったPPの女の子を追いかけてきたのはいいが、初日に彼女が家族12人総出で迎えにやってきた後、ロハス沿いの有名高級レストランで、イナゴのような勢いで飲み食いをされた上に、宿泊しているホテルにも、彼女の家族の分、2部屋も追加させられる羽目になった。
そんな日々が、それから5日も続いたのである。
しかも、弟とか妹とか称するガキ共が、自分たちの部屋にも潜入し、彼女とベッドインなど、望むべきもない事態であったのは云うまでもない。
英造は、ただ茫然としてそれを受け入れるしかなかった。
5日後、英造に金が無くなったのを知った彼女とその家族は、蜘蛛の子を散らすようにして去った。
当然と言えば当然だが、英造には、一体何が何だか分からなかったに違いない。
何しろ、フィリピンに来たのは、始めてであったのである。
言葉の問題は勿論、彼女がいなければ、一人では何処にへもいけないのだ。
(しかし、100万円がこんなに早くなくなるとは・・・・)
ベッドの上で英造は、狐に包まれたような顔をしながら、ため息をついた。
思えば、ホテルや飲食店の支払いはもちろん、チップだとか、車のチャーター料とかの名目で、彼女が彼の財布から、打ち出の小槌のように金を引き出していたのを思い出す。
ショッピングモールでは、圧巻であった。
家族全員の服を、上から下はむろん、靴にいたるまで新調させられたのである。
王様のような食事や、新調された服や靴。
彼女はもちろん、その両親や家族は狂喜乱舞したが、英造はその笑顔を見ているだけで舞い上がってしまい、自分の財布を、コントロール出来ずにいたのであった。
財布の中には、千数百ペソしかなかった。
但し、クレジットカードはあるので、あと数日は滞在出来るかもしれないが、たかが知れている。
英造は、顔をしかめながら思案に耽っていた。
悔しいのであろうか?
どうやら、そうでもなさそうである。
むしろ、あんなに鮮やかにお金を持って行かれたことに、清清しさえ感じるほどであったから、この男の今の悩みはそんな小さなことではなかったに違いない。
取り敢えず、ホテルは安宿に変わったが、今すぐ日本に帰る気にはならなかった。
千葉の暴走半島の、ある漁師町に生まれ育った英造は、漁師である祖父や父の跡をついで、漁師一本槍の暮らしをしてきた。
祖父や父は、いつも口癖のように、『漁師たるものは一旦外海に出る時は、死を恐れず命を張って漁をするものじゃ!』、といつも英造に教えてきた。
自然と、死生は考えないように、生きていく習性が身に付いている英造である。
太平洋の荒波に揉まれていれば、そのように達観してしまうものであろうか?
いやいや、これも持って生まれた性格といってもいいであろう。
英造は、生まれて始めて外国と言う所にきたが、最初に訪れたここフィリピンで、何かをやってやろうと言う気になっていたのである。
全く、正気の沙汰ではないが・・・
来たばかりのこの国で、いきなりそういうことを考える人間など、ざらにいないと思うのだが、英造は、ここで自分の何かを試してみたかった。
力と云っていいのか、運といっていいのか、自分でも分からなかった。
漁師の感といっていい。
この国に来た瞬間から、その感のせいで、血が騒ぐのを押えきれなくなったのである。
と言って、今すぐ何も出来るはずは無い。
英造は、やおらベッドから起き上がると、外に出かけることにしたのである。
ホテルの外へ出た。
3月の日差しは、思ったよりきつかったが、もとよりこれ漁師、これくらいの暑さ、何ほどのこともない。
場末のホテル故に、ホテルの周りには、胡散くさい連中が屯している。
英造が、何も屈託も無くそこを通り過ぎようとした時、一人の男が声を掛けて来た。
『お客さん、何処行く?』
『ん?・・・・・』
『あなた、あそこのホテルに泊まっているでしょう?、私知ってるよ。私ホテルのガイドね、ガイド!』
その男は、流暢な日本語で英造にそう云った。
続く・・・・・
皆さんも入ってね!!!
思えば、嵐のような1週間であった。
全財産を持って、日本で知り合ったPPの女の子を追いかけてきたのはいいが、初日に彼女が家族12人総出で迎えにやってきた後、ロハス沿いの有名高級レストランで、イナゴのような勢いで飲み食いをされた上に、宿泊しているホテルにも、彼女の家族の分、2部屋も追加させられる羽目になった。
そんな日々が、それから5日も続いたのである。
しかも、弟とか妹とか称するガキ共が、自分たちの部屋にも潜入し、彼女とベッドインなど、望むべきもない事態であったのは云うまでもない。
英造は、ただ茫然としてそれを受け入れるしかなかった。
5日後、英造に金が無くなったのを知った彼女とその家族は、蜘蛛の子を散らすようにして去った。
当然と言えば当然だが、英造には、一体何が何だか分からなかったに違いない。
何しろ、フィリピンに来たのは、始めてであったのである。
言葉の問題は勿論、彼女がいなければ、一人では何処にへもいけないのだ。
(しかし、100万円がこんなに早くなくなるとは・・・・)
ベッドの上で英造は、狐に包まれたような顔をしながら、ため息をついた。
思えば、ホテルや飲食店の支払いはもちろん、チップだとか、車のチャーター料とかの名目で、彼女が彼の財布から、打ち出の小槌のように金を引き出していたのを思い出す。
ショッピングモールでは、圧巻であった。
家族全員の服を、上から下はむろん、靴にいたるまで新調させられたのである。
王様のような食事や、新調された服や靴。
彼女はもちろん、その両親や家族は狂喜乱舞したが、英造はその笑顔を見ているだけで舞い上がってしまい、自分の財布を、コントロール出来ずにいたのであった。
財布の中には、千数百ペソしかなかった。
但し、クレジットカードはあるので、あと数日は滞在出来るかもしれないが、たかが知れている。
英造は、顔をしかめながら思案に耽っていた。
悔しいのであろうか?
どうやら、そうでもなさそうである。
むしろ、あんなに鮮やかにお金を持って行かれたことに、清清しさえ感じるほどであったから、この男の今の悩みはそんな小さなことではなかったに違いない。
取り敢えず、ホテルは安宿に変わったが、今すぐ日本に帰る気にはならなかった。
千葉の暴走半島の、ある漁師町に生まれ育った英造は、漁師である祖父や父の跡をついで、漁師一本槍の暮らしをしてきた。
祖父や父は、いつも口癖のように、『漁師たるものは一旦外海に出る時は、死を恐れず命を張って漁をするものじゃ!』、といつも英造に教えてきた。
自然と、死生は考えないように、生きていく習性が身に付いている英造である。
太平洋の荒波に揉まれていれば、そのように達観してしまうものであろうか?
いやいや、これも持って生まれた性格といってもいいであろう。
英造は、生まれて始めて外国と言う所にきたが、最初に訪れたここフィリピンで、何かをやってやろうと言う気になっていたのである。
全く、正気の沙汰ではないが・・・
来たばかりのこの国で、いきなりそういうことを考える人間など、ざらにいないと思うのだが、英造は、ここで自分の何かを試してみたかった。
力と云っていいのか、運といっていいのか、自分でも分からなかった。
漁師の感といっていい。
この国に来た瞬間から、その感のせいで、血が騒ぐのを押えきれなくなったのである。
と言って、今すぐ何も出来るはずは無い。
英造は、やおらベッドから起き上がると、外に出かけることにしたのである。
ホテルの外へ出た。
3月の日差しは、思ったよりきつかったが、もとよりこれ漁師、これくらいの暑さ、何ほどのこともない。
場末のホテル故に、ホテルの周りには、胡散くさい連中が屯している。
英造が、何も屈託も無くそこを通り過ぎようとした時、一人の男が声を掛けて来た。
『お客さん、何処行く?』
『ん?・・・・・』
『あなた、あそこのホテルに泊まっているでしょう?、私知ってるよ。私ホテルのガイドね、ガイド!』
その男は、流暢な日本語で英造にそう云った。
続く・・・・・
皆さんも入ってね!!!
2009-02-14 14:48
nice!(2)
コメント(28)
トラックバック(0)
>自分の財布を、コントロール出来ずにいたのであった
この部分は ノンフィクション (ToT)
by 呂栄 英造佐右衛門 (2009-02-14 19:06)
こんにちは
始めましたね、英造君房総の出身ですか成田が近いのがせめてもの慰
め、何があろうと帰りのチケットさえあれば何とかなりそうですね。
あ、カルデロンのり子(13歳)だけ許可が出たそうで埼玉の蕨在住だそうで
す。
by はっつ (2009-02-14 19:57)
英造君のキャラ…可哀想なキャラって言うより、疲れるわな!…(プッ
けど、明日は我が身…オイラも渡比ったら変わらないような気がするから困ったものですは!…(プッ
by 裂空ミスキタ (2009-02-15 07:45)
おはようございます。
新連載をさっそく読ませて頂きました。
頑張って下さい!
by しんご (2009-02-15 09:47)
新作おめでとうございます!
漂流するんですね?
行き着く先はどこでしょうか?
末はドザエモンですかね?(爆
今度こそ完結目指して頑張ってください!
by mak (2009-02-15 09:59)
日本人のように長くお金を引き出そうとは考えないんですね
家族はともかく彼女までいなくなったのはショックですね
流暢な日本語を聞くと身構えてしまいます
by on (2009-02-15 10:31)
呂栄 英造佐右衛門さん
早速お越し頂きまして、有難う御座います!(笑)
やはり、コントロールは出来ませんか?
これが出来る人で、P型脳炎患者はいませんネ!!
週一で更新の予定ですので、これからも宜しくお願いします。
by moimoi (2009-02-15 11:21)
はっつさん
成田が近いのですね!
そういうことを忘れていました。
使わさせて貰いましょう!(笑)
by moimoi (2009-02-15 11:25)
本部長さん
英造さんのの実物を拝したことは、まだありません!(笑)
この物語は、恋愛小説というより冒険小説風な物語にしてみたいと考えています。
応援して下さいね!!
by moimoi (2009-02-15 11:29)
しんごさん
週一が精一杯な私です!
何とか続けて行きたいと思いますので、応援して下さいね!!
by moimoi (2009-02-15 11:30)
makさん
>末はドザエモンですかね?(爆
げげげ、まだ殺さないで下さい!(笑)
何とか完結して見たいと思います。
コメントを、またお待ちしていますよ!!
by moimoi (2009-02-15 11:33)
onさん
思ったより英造さんは、さっぱりとした性格のようです。
どういう展開になるかは、私にも分かりません。(笑)
バハラナでいきますよ!!!
by moimoi (2009-02-15 11:35)
新連載 「呂宋漂流記」 これからが楽しみです♪
漢字で ルソン は 呂宋 と書くんですね~勉強になります^^
僕は来週から、呂宋へ漂流しに行きます(笑
by bodhi (2009-02-15 18:50)
あれ?・・・・・・・・・・?(笑)
最近ある所で・・・・聞いたよ~な~(>_<)
アコは海外に行くと金銭感覚が狂います。
何も考えずに生きていますから(爆)
さあ、いよいよ事件の始まりですね?
by T360 (2009-02-15 21:28)
昨日はお世話になりました。
また大暴れしていたようで・・・・・相変わらず申し訳ありませんでした。
また宜しくお願いいたします。
by 15分でいいちこボトル1本を飲むオヤジ (2009-02-15 22:28)
お、新シリーズですね!連載開始、おめでとうございまーす!
続きが楽しみでーすヽ(^。^)ノ
by いけ麺 (2009-02-15 23:49)
先日はお世話になりました。
今度は、公園あたりに挑戦します(爆。
by 路上で鼾をかくおやじ (2009-02-16 08:16)
bodhiさん
来週からいよいよ漂流ですか?(笑)
時間あれば、連絡して下さい!
コミュニティの方へ入れて下さいね!!!
by moimoi (2009-02-16 08:28)
T360さん
>最近ある所で・・・・聞いたよ~な~(>_<)
大正解です!(笑)
まあ、よくある話だからいいでしょう・・・
マニラに来て金遣いが荒くなるのは、仕方ありませんね。
使いたくなる所が、多すぎます!(爆)
by moimoi (2009-02-16 08:30)
昨夜戻りました。
♪
お世話になりましたぁ~~~。♪
by shiNji (2009-02-16 08:32)
昔の比国嵌りの『痛い親父』の典型の物語の始まりですね。
片腹痛い読者もいるのでしょうね・・・(苦笑
もっとも私もそれに近い情況で初渡比しました・・・(笑
家族への土産も持たず、クバオの「イセタン」でまず5万円を彼女に渡し、
母親初め家族の衣料を買うのを只見てました。
因みに当時1万円1700ペソ、1ドル300円だったと記憶してますが・・・?
(1987年8月)
by Yamachang (2009-02-16 08:32)
15分でいいちこボトル1本を飲むオヤジさん
アイスペールの、一気飲みは流石です!(笑)
全部で、3本位空きましたか?
ほとんど、一人で飲んでいましたね!
久々の大虎ぶり、堪能させて貰いましたよ!!(爆)
by moimoi (2009-02-16 08:33)
いけ麺さん
はい、週一ですが更新頑張りま~す!!
しかし、長い間隔だと、ストーリー忘れ去られそうですね!!(汗)
by moimoi (2009-02-16 08:36)
路上で鼾をかくおやじさん
あれには、参りました!(笑)
色々な人が通り掛っては、覗き込んでいました!
中には、椅子を持ってきてくれた人もいましたよ!!
今度は、公園ですか?
楽しみです!(爆)
by moimoi (2009-02-16 08:39)
shiNjiさん
短い夜でしたね!(笑)
また、ゆっくりとお会いしましょうね!!
by moimoi (2009-02-16 08:41)
Yamachangさん
流石は、ご長老!(笑)
そういう時代から、お越しだとは・・・
当時の5万円は、大きかったでしょうね!
英造の物語は、少し違うストーリーにしたいと思いますが、どうなりますか・・・
作者にも、検討がつきません!(大汗)
by moimoi (2009-02-16 08:46)
先日はご挨拶だけで失礼致しました~~~~~~!!
って、皆さん酔ってたから覚えてなかったりして...^.^;>
週一ペースですか。。。ゆっくり頑張って下さいね^^v
by OSCAR (2009-02-16 11:38)
OSCARさん
後半は、大変でした!
梅さん、路上で大爆睡です!(笑)
先程カメラのを確認して驚きました。
オスカーさんが、大型アイスペールで、飲んでいましたね!
覚えておりません!(爆)
by moimoi (2009-02-16 12:05)