英造がゆく ~呂宋漂流記~ 其の六 [フィクション]
英造は、マニラ空港ではもっと舞い上がってしまっていた。
別れ際に、セシルが片頬にキスをしてくれたのだ。
成田に着くまで、英造はそれを思い出すたびに、片眉をピクつかせながらニヤニヤしていたので、恐らく他の乗客からは、気が触れていると思われたに違いない。
とにかく実家に着くまでは、夢心地の英造であった。
実家に着いた英造は、夢から覚めざるを得なかった。
英造のおやじの豪造が、鬼の形相で待ち構えていたのだ。
豪造は、息子がフィリピンなどに行くことには反対であったのだ。
大事な漁期に、10日も休むなど、昔気質の父親には、到底受け入れられなかったのである。
英造は、父親には黙ってフィリピンに行った。
43歳に今に至るまで、結婚もせずPPクラブに入り浸っている息子に、今度こそお灸をすえてやると意気込んでいた所に、英造が、逃げ出すようにフィリピンに飛び立って行ったのである。
2~3日家で見かけないので、漁協に問い合わせてみると、何と、そこの専属の旅行会社の方で、フィリピン行きのチケットを買ったことを知った。
知りはしたが、後の祭りである。
連れ合いである英造の母を、5年前に亡くした豪造ではあるが、そうかといって、別にフィリピン人に対して、特別な悪意を持っているわけではない。
問題は、英造にあるのだ。
漁師が海に出ず、陸で遊んでばかりいるのを嘆いているに過ぎない。
自分が生きているうちに、英造を1人前にしておくことこそが、豪造の夢である。
15歳の時から、海にでている豪造である。
英造は、大学を出てからサラリーマンになったが、ある事情で辞めてしまい、豪造の跡継ぎになって、今がまだ10年目である。
10年と言えば、かなりの経験だと思うが、漁師歴50年の豪造にとって見れば、英造など、いつまで経ってもひよこ程度にしか見えないのかも知れない。
ともあれ英造は、玄関先で親父の豪造の姿を認めると、一目散に逃げ出そうとした。
その後ろから
『待てい・・・!!』
凛とした、豪造の野太い声が、英造の足を思わず止めてしまった。
小さい頃からの、習性であろう。
昔から、親父のこの声には、弱かった英造である。
『な、何じゃ、お、親父い?』
英造は、それだけ言うのがやっとであった。
『おのれは、どこへ行っとんたんじゃ?』
『・・・・・・・・』
『フィリピンに行っておったのは、調べがついておる。 どうしてわしに隠して行ったのじゃ?』
『いやあ、云ったら反対されるのは目に見えとるわい!、だからわしも云わなんだのだ。』
『フィリピンに何しに行った?』
『うっ・・・・・・・・』
英造は、この質問には返事に窮した。
まさか、PPの女の子を追いかけて行ったとも云えず、まして違う女の子と結婚の約束までしてきたことなど、口が裂けても云えない。
知れば、豪造も卒倒してしまうかも知れない。
仕方なく、英造は嘘をつくことにした。
しかも、相当慌てていたので、突拍子も無い嘘を・・・・・
続く・・・・・
皆さんも入ってね!!!
別れ際に、セシルが片頬にキスをしてくれたのだ。
成田に着くまで、英造はそれを思い出すたびに、片眉をピクつかせながらニヤニヤしていたので、恐らく他の乗客からは、気が触れていると思われたに違いない。
とにかく実家に着くまでは、夢心地の英造であった。
実家に着いた英造は、夢から覚めざるを得なかった。
英造のおやじの豪造が、鬼の形相で待ち構えていたのだ。
豪造は、息子がフィリピンなどに行くことには反対であったのだ。
大事な漁期に、10日も休むなど、昔気質の父親には、到底受け入れられなかったのである。
英造は、父親には黙ってフィリピンに行った。
43歳に今に至るまで、結婚もせずPPクラブに入り浸っている息子に、今度こそお灸をすえてやると意気込んでいた所に、英造が、逃げ出すようにフィリピンに飛び立って行ったのである。
2~3日家で見かけないので、漁協に問い合わせてみると、何と、そこの専属の旅行会社の方で、フィリピン行きのチケットを買ったことを知った。
知りはしたが、後の祭りである。
連れ合いである英造の母を、5年前に亡くした豪造ではあるが、そうかといって、別にフィリピン人に対して、特別な悪意を持っているわけではない。
問題は、英造にあるのだ。
漁師が海に出ず、陸で遊んでばかりいるのを嘆いているに過ぎない。
自分が生きているうちに、英造を1人前にしておくことこそが、豪造の夢である。
15歳の時から、海にでている豪造である。
英造は、大学を出てからサラリーマンになったが、ある事情で辞めてしまい、豪造の跡継ぎになって、今がまだ10年目である。
10年と言えば、かなりの経験だと思うが、漁師歴50年の豪造にとって見れば、英造など、いつまで経ってもひよこ程度にしか見えないのかも知れない。
ともあれ英造は、玄関先で親父の豪造の姿を認めると、一目散に逃げ出そうとした。
その後ろから
『待てい・・・!!』
凛とした、豪造の野太い声が、英造の足を思わず止めてしまった。
小さい頃からの、習性であろう。
昔から、親父のこの声には、弱かった英造である。
『な、何じゃ、お、親父い?』
英造は、それだけ言うのがやっとであった。
『おのれは、どこへ行っとんたんじゃ?』
『・・・・・・・・』
『フィリピンに行っておったのは、調べがついておる。 どうしてわしに隠して行ったのじゃ?』
『いやあ、云ったら反対されるのは目に見えとるわい!、だからわしも云わなんだのだ。』
『フィリピンに何しに行った?』
『うっ・・・・・・・・』
英造は、この質問には返事に窮した。
まさか、PPの女の子を追いかけて行ったとも云えず、まして違う女の子と結婚の約束までしてきたことなど、口が裂けても云えない。
知れば、豪造も卒倒してしまうかも知れない。
仕方なく、英造は嘘をつくことにした。
しかも、相当慌てていたので、突拍子も無い嘘を・・・・・
続く・・・・・
皆さんも入ってね!!!
2009-03-04 07:49
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コメント(14)
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「嘘が嘘をよぶ」なんて言われますが、英造は何を言ったのでしょう?
男43才、違いの分る年齢?分別のつく年齢・・・(プッ
「嵌り親父」には痛い言葉・・・(苦笑
私もPP営業のオーデションで渡比に燃えていました・・・(羞恥
by いくつになっても比国から離れられないロロ (2009-03-04 09:20)
いくつになっても比国から離れられないロロさん
さて、何と言い訳したのでしょうか?
作者も驚きく、衝撃の続きは、明日です!!!(爆)
by moimoi (2009-03-04 09:26)
>仕方なく、英造は嘘をつくことにした。
>しかも、相当慌てていたので、突拍子も無い嘘を・・・・・
フィリピン人が嘘をつく理由と同じだと思われます
by on (2009-03-04 13:26)
養殖?
by sakura (2009-03-04 14:45)
onさん
>フィリピン人が嘘をつく理由と同じだと思われます
突拍子も無い嘘は、確かに同じ状況からでしょうね!
さて、どんな言い訳が生まれるのか、明日が楽しみですね!
by moimoi (2009-03-04 15:07)
sakuraさん
おおはずれ~!(笑)
by moimoi (2009-03-04 15:08)
こんにちは
海路を漁船でフイリピンまで行くため
とりあえず最初は飛行機で下調べを・・・
燃料はドラム缶で何本、焚くのか・・・
そう考えると飛行機代って安い、1Km5円?ん
by はっつ (2009-03-04 18:09)
はっつさん
飛行機代ですか?(笑)
なるほど下見ですね!
漁船???
見破られたかな・・・
by moimoi (2009-03-04 20:09)
叱って貰くれる親父殿がいることっていいですよね、アタシのオヤジ
はあの世に逝ってもう居ないですw。(T_T)
by shiNji (2009-03-04 22:26)
嘘もつき続けると本当みたいになるらしいですが、英造はドツボにハマりそうですねー(^_^;)
by いけ麺 (2009-03-05 00:51)
う~ん!
アコの親父を思い出します(>_<)
とても大きく怖かった・・・
親父が居たらPP通ってなかったんだろうな~(笑)
by T360 (2009-03-05 04:22)
shiNjiさん
叱ってくれる親父ですが、話がどうも危なくなってきて・・・(爆)
by moimoi (2009-03-05 06:59)
いけ麺さん
その通りです!(笑)
本日の記事の展開は、私も予想していませんでした!(爆)
by moimoi (2009-03-05 07:00)
T360さん
>とても大きく怖かった・・・
pp通いを認めてくれる親父さんだったら、素晴らしかったでしょうね!
さて、英造の親父はどうでしょう?
今日は、嵐が吹き荒れますよ!(笑)
by moimoi (2009-03-05 07:02)