幕末ピンパブ物語 呂宋編 第二十五回 『黄金の在処!』 [フィクション]
鴨野達一行は、仙兵衛の言葉に強い衝撃を受けた。
黄金を求めて、遥々日本から呂宋国くんだりまで来たと云うのに、これでは何も意味をなさない。
山奧屋が嘘をついているとも考えられなくも無かったが、その人柄を見る限り、嘘ではあるまい。
鴨野は、途方にくれながらも、自分達が、幕府とスペイン提督の両方から頼まれたことを正直に打ち明けた上で、こう尋ねた。
『では、黄金は一体何処にあるのでしょう・・・?』
所有権は彼らに有ると知りながらも、鴨野は役目柄、そう聞かずには居られない。
『黄金は、ここには御座らぬ、しかしこの呂宋国内には、確かにあります。』
『ほほう、そ、それは誠に御座るか?』
鴨野は、失いかけた希望に、再び火が点じられるのを感じながらそう言った。
『実は・・・』
山奧屋仙兵衛は、そこまで言い掛けて突然止めた。
『鴨野様、ここではこの話は出来ませぬ、二人だけで茶室の方へ参りませぬか?、これ茶露や、御前はお客人を案内せい。』
そう言うと、仙兵衛はさっさと立ち上がり、先に茶室の方へ消えて行った。
その後で茶露が案内に立ち、鴨野はそれに従ったが、後の人々は残された。
その残された人の中で、すくっと立ち上がって、どこかに行こうとした人物がいる。
萬久こと菩薩であった。
『待たれよ萬久殿!』
萬久が立ち去ろうとした瞬間、松五郎が声を掛けた。
『どこへ行かれる?』
『か、厠で御座る。』
『じゃあ、私も一緒に行きましょう・・・』
松五郎も立ち上がり、二人とも外に有る厠に向かった。
萬久は恐らく、鴨野達の話を盗み聴きしようとしたに違いない。
松五郎は、それを悟って、一緒について行くと言い出したのだ。
これでは、菩薩の動きは封殺されてしまうであろう。
一方鴨野は、茶室の中で仙兵衛が点てた茶を嗜みながら、彼の話を待った。
黄金は確かにあるが、ここにはなく、他にあるという。
仙兵衛は、おもむろに、こう話を再開した。
初代山奧屋鶴兵衛は、黄金を持ったまま安泰幌に隠れ逃れたのではなく、オスカルスペインの祖先ラスカル提督と戦って敗れたときに、その敗れた地に黄金だけを埋めて、箱には石を詰め込み、いかにも黄金を持ったまま逃走したように見せかけたらしい。
その秘密は、ごく一部の腹心しか知らず、今ではその事実を知るものは、世襲で山奧屋を継いだ仙兵衛だけになってしまった。
万が一捕まったときに、スペイン軍の目をごまかすためだったとは云え、捕まらずにまんまと逃げおおせた鶴兵衛は、そのことを後で後悔して、何度か奪還作戦を立てようとしたが、スペイン軍の監視が厳しくて、果たすことが出来ずに、そのまま他界してしまった。
もっともその事実は、文章には残らず、口伝で、山奧屋のみ世襲に受け継がれたが、仙兵衛の代になって話が外に漏れ、山の仲間からも探索に行くべきだと言う声が、出始めたのだそうである。
最近では世代交代もあって、ますますそのような声が高くなり、躊躇する仙兵衛を、公然として非難する輩(やから)も現れたらしい。
そういう時に、登場して呉れたのが鴨野達である。
聞けば、今のスペイン提督であるオスカルにも頼まれて来たとのこと。
これを機会に、何とか探し出して掘り出せないか、山奧屋仙兵衛の、深刻な願いでもあった。
続く・・・
黄金を求めて、遥々日本から呂宋国くんだりまで来たと云うのに、これでは何も意味をなさない。
山奧屋が嘘をついているとも考えられなくも無かったが、その人柄を見る限り、嘘ではあるまい。
鴨野は、途方にくれながらも、自分達が、幕府とスペイン提督の両方から頼まれたことを正直に打ち明けた上で、こう尋ねた。
『では、黄金は一体何処にあるのでしょう・・・?』
所有権は彼らに有ると知りながらも、鴨野は役目柄、そう聞かずには居られない。
『黄金は、ここには御座らぬ、しかしこの呂宋国内には、確かにあります。』
『ほほう、そ、それは誠に御座るか?』
鴨野は、失いかけた希望に、再び火が点じられるのを感じながらそう言った。
『実は・・・』
山奧屋仙兵衛は、そこまで言い掛けて突然止めた。
『鴨野様、ここではこの話は出来ませぬ、二人だけで茶室の方へ参りませぬか?、これ茶露や、御前はお客人を案内せい。』
そう言うと、仙兵衛はさっさと立ち上がり、先に茶室の方へ消えて行った。
その後で茶露が案内に立ち、鴨野はそれに従ったが、後の人々は残された。
その残された人の中で、すくっと立ち上がって、どこかに行こうとした人物がいる。
萬久こと菩薩であった。
『待たれよ萬久殿!』
萬久が立ち去ろうとした瞬間、松五郎が声を掛けた。
『どこへ行かれる?』
『か、厠で御座る。』
『じゃあ、私も一緒に行きましょう・・・』
松五郎も立ち上がり、二人とも外に有る厠に向かった。
萬久は恐らく、鴨野達の話を盗み聴きしようとしたに違いない。
松五郎は、それを悟って、一緒について行くと言い出したのだ。
これでは、菩薩の動きは封殺されてしまうであろう。
一方鴨野は、茶室の中で仙兵衛が点てた茶を嗜みながら、彼の話を待った。
黄金は確かにあるが、ここにはなく、他にあるという。
仙兵衛は、おもむろに、こう話を再開した。
初代山奧屋鶴兵衛は、黄金を持ったまま安泰幌に隠れ逃れたのではなく、オスカルスペインの祖先ラスカル提督と戦って敗れたときに、その敗れた地に黄金だけを埋めて、箱には石を詰め込み、いかにも黄金を持ったまま逃走したように見せかけたらしい。
その秘密は、ごく一部の腹心しか知らず、今ではその事実を知るものは、世襲で山奧屋を継いだ仙兵衛だけになってしまった。
万が一捕まったときに、スペイン軍の目をごまかすためだったとは云え、捕まらずにまんまと逃げおおせた鶴兵衛は、そのことを後で後悔して、何度か奪還作戦を立てようとしたが、スペイン軍の監視が厳しくて、果たすことが出来ずに、そのまま他界してしまった。
もっともその事実は、文章には残らず、口伝で、山奧屋のみ世襲に受け継がれたが、仙兵衛の代になって話が外に漏れ、山の仲間からも探索に行くべきだと言う声が、出始めたのだそうである。
最近では世代交代もあって、ますますそのような声が高くなり、躊躇する仙兵衛を、公然として非難する輩(やから)も現れたらしい。
そういう時に、登場して呉れたのが鴨野達である。
聞けば、今のスペイン提督であるオスカルにも頼まれて来たとのこと。
これを機会に、何とか探し出して掘り出せないか、山奧屋仙兵衛の、深刻な願いでもあった。
続く・・・
2010-02-18 06:34
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コメント(18)
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黄金も気になりますが、アコには萬久さんと松五郎さんの方が
気になります(笑)
何時か正体がばれる時が来ますね?
by こう平 (2010-02-18 08:23)
本物の私は今から横浜に行ってきます。
なんかますます長くなりそうな予感が…
果たして黄金はいずこに?セブあたりか、レイテ?
できればキレイどころがいるところを希望しますが、そろそろ軟禁状態から解放して下さいよ!(爆)
by 萬久 (2010-02-18 08:55)
太平洋戦争後の山下財宝を探し求めていた邦人を人伝に知っています。
フィリピンで分譲住宅や焼肉屋で数億の銭を失い、なおかつ夢の財宝探しを
していた御仁は昨年茨城に戻っていると聞きました。
昨年亡くなった知人も彼に多少の出資をしていたみたいでした。
洋の東西を問わず財宝探しは男のロマンなんでしょうか・・・(笑
>躊躇する仙兵衛を、公然として非難する輩(やから)も現れたらしい。
まさか在比組ではないですよね・・・(アヒャヒャ!
by kamono (2010-02-18 09:05)
山奥屋のおやじさんも財宝の在り処は知りませんでしたかwww
実はおいらが座っている椅子の下の地中深くだったりして・・・灯台下暗し!?
港近くの頓怒なら、かなりの雑踏でなかなか掘り出すのは難しいですが・・・
by 押車提督 (2010-02-18 09:11)
ウォォー 鴨野殿&山奥屋殿の還暦越え最強タッグですな。
アタシも来年は還暦ですは。huhuhuhu
by 神事屋 (2010-02-18 10:09)
こう平どん
>何時か正体がばれる時が来ますね?
甲賀VS伊賀ですな!
まあ、旗色が悪くなると、失踪する奴が出てくるかも・・・(爆)
by moimoi (2010-02-18 10:29)
萬久さん
>なんかますます長くなりそうな予感が…
悪い予感ですな!(笑)
作者の思惑とは別に、指が勝手にストーリーを作ってしまいます。
>そろそろ軟禁状態から解放して下さいよ!(爆)
私の指に聞いて下さいよ!(爆)
by moimoi (2010-02-18 10:33)
>東西を問わず財宝探しは男のロマンなんでしょうか・・・
探す当てがあるだけ、まだましです。
一攫千金は、男の夢ですね。
>まさか在比組ではないですよね・・・(アヒャヒャ!
いや、日本の御意見番さんからだという噂が・・・(爆)
by moimoi (2010-02-18 10:36)
オスカル提督さん
>実はおいらが座っている椅子の下の地中深くだったりして・・・
私の住んでいる、アパートの下も掘ってみて下さい!(笑)
>かなりの雑踏でなかなか掘り出すのは難しいですが・・・
あまり、負けてはいませんよ!(爆)
by moimoi (2010-02-18 10:39)
神事屋さん
>鴨野殿&山奥屋殿の還暦越え最強タッグですな。
静と動!
火と油!
犬と猿!
え~と、あと何だったっけ?(冗爆)
by moimoi (2010-02-18 10:42)
ほー
なんか長くなりそうなw
がんばって
書いていただきましょうw
by (´ρ`) (2010-02-18 11:20)
とろ吉どん
>書いていただきましょうw
やだ!(爆)
by moimoi (2010-02-18 11:29)
300年近く経てば使い切っているだろうとは思っていたのですが、うまい展開でね
それにしてもみなさん、コメント入れるの早い!!
生き残ろうと必死?
by on (2010-02-18 13:03)
また出遅れでんがな・・・・・。
(今日は朝から酒の買い出しに行かされて、戻ったばかりです。)
開けてびっくり玉手箱に成らないことを祈ります。
皆さんがこのまま呂宋国に残る事になったら、私はその方が嬉しいですが。
by 山小屋の住人 (2010-02-18 13:49)
穏温恩さん
>使い切っているだろうとは思っていたのですが
使ってしまう想定は、考えても見ませんでした!(ガハハ)
>生き残ろうと必死?
こういう訳で、誰も振り落とすことが出来無いのですが、反対に困っています!(爆)
by moimoi (2010-02-18 15:08)
山の上仙兵衛さん
>酒の買い出しに行かされて、戻ったばかりです
飲めないのにですか?
赤馬だけは、勘弁して下され!(笑)
>このまま呂宋国に残る事になったら、私はその方が嬉しいですが。
馬は一足先に、今日日本に帰りましたよ!(爆)
by moimoi (2010-02-18 16:19)
松五郎は雲隠れです!
おいらは本日も厨房に・・・・・・
売上げないから飲みに来てくれ!
by タイガー大橋 (2010-02-19 04:10)
タイガー大橋さん
>松五郎は雲隠れです!
え~、本文に関係ないコメントを、有難う御座います!(笑)
売上はなかったの?
来週は行くよ!
それまで、頑張って下され!
by moimoi (2010-02-19 06:51)