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幕末ピンパブ物語 呂宋編 第二十四回 『山中の暮らし』 [フィクション]

読者諸氏も知りたいであろうから、ここは仙兵衛に代わり、著者が説明しておこう。
安泰幌に隠れた山奧屋鶴兵衛達総勢45名は、鶴兵衛の屋敷を中心に、日本人村を形成した。
伴天連の落ち武者の中には、絵師あがりや大工上がりが混じっていたので、これは容易であった。
先に菩薩と萬久に捕らえられた男などは、伊賀の忍者くずれで、鶴兵衛が、山を警護するために軍団を組んだ際に、棟梁になった男の子孫であった。

その他に、田や畑を耕し食物を供給する台所方、建物普請などを請け負う作事方など、様々な職掌が世襲で引き継がれていたのである。
彼らはいずれも現地の妻を娶り、仲間内での婚儀を建前にしてきたが、その後、近親交配の弊害なども見られたため、麓まで降りて行って、生娘を掻っ攫ってくる場合もあったらしい。
その為に、山賊が出ると言う噂も立ったのだが、これが幸いして、山に近づくものもいなかった。

山奧屋仙兵衛は、代々の頭目であり、彼で七代目に当たるらしい。
徳川将軍が当代で15代になるというのに、彼の一族は長命だと言って良かろう。
安泰幌の新鮮な空気を吸っていれば、必然的に寿命も伸びると思われる。
村には、厳密な掟が存在した。
しかし、これを破るものも、今まではいなかった。

先程の世襲制度も勿論だが、教育制度も充実して居り、ある一定年齢に達するまでは、教育は、村が運営する施設の中で、学ぶことが義務付けられていた。
彼らが日本語に堪能なのも、無理からぬことである。
こうやって彼らは、260有余年と言う月日を、無事に過ごして来ることが出来たのである。
仙兵衛はここまで一気に話すと、今度は逆に、日本の今の現状を聞きたがった。

当然であろう。
歴史の上での彼らの知識は、豊臣の世で止まっているのだ。
当然、徳川幕府による江戸開府の話も知らないであろうし、その幕府も最早、崩壊の寸前を迎えていようなどとは、夢にも思わないことであろう。
鴨野は、出来るだけ仙兵衛の意に沿うように、豊臣家滅亡から現在に到るまでの歴史を語った。

聞き終わると、何故か仙兵衛は溜息をついた。
『おや、どうしなさった、溜息などとは・・・』
鴨野は、不思議に思いそう尋ねた。
『いやいやお恥ずかしい、では、これを年寄りの繰り言と思って聞いて下されい・・・。』
仙兵衛はそう言うと、こう語り始めたのである。

三百年近くも山中に生きてきたが、最近では秩序も顕著に落ちてきて、若輩のやからなどは、時々山を降りて、華陰多(カインタ)と言う土地に新しく出来た遊興所に、通う者までが現れる始末だ。
仙兵衛とても、山中の暮らしには少々飽きがきたようで、たまには下界を覗いて見たくもあるし、祖国である日本へ行ってみたい気持ちもあった。
若いものを押さえて行くのにも限度もあろうし、これからの自分の道も見直したい。

そうなると、下山をしなくてはならないが、スペイン軍との摩擦も困るし、道中のお金もない。
それやこれやで、溜息が出てしまったと言う訳であった。
鴨野はそこまで聞くと、驚いて口を挟んだ。
『山奧屋殿、その話少しお待ち下されよ。』
鴨野は、話がおかしくなったので、普請な面持ちでこう尋ねた。

『率直に申し上げますが、先程、我々がここに来た目的の察しがつくと仰せられたが、ではあの黄金のことであろうということは、お分かりでいらっしゃったのですな?』
『はい、左様で・・・』
『では、あの黄金があれば、道中の路銀など、如何様にもなりましょうに・・・.』
『ああ、黄金の在処(ありか)で御座るか、あれはここには御座りませぬ。』


衝撃の次回に続く・・・


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コメント 16

萬久

果たして黄金は何処に・・・・・
ですが。

ん、・・・
今気づいたのですが
表題の「幕末ピンパブ物語」のピンパブは何処に?(爆


by 萬久 (2010-02-17 08:38) 

moimoi

萬久さん

>表題の「幕末ピンパブ物語」のピンパブは何処に?(爆
何れ出てくるのでは?(爆)
by moimoi (2010-02-17 08:50) 

kamono

>260有余年と言う月日
子孫も相当数増えたであう・・・(プッ

>華陰多(カインタ)と言う土地に新しく出来た遊興所
今では穴場ではないが、4年前は知る人ぞ知る楽しい場所でござった・・・(笑

>衝撃の次回に続く・・・
終焉に向かっているのであろうか?
まだしなければならないことが山のように残ってござるのに・・・(謎

by kamono (2010-02-17 09:09) 

神事屋

>華陰多(カインタ)と言う土地に新しく出来た遊興所に、

昨年アタシも遊びに行きますた、中々の遊興所でした。


黄金を見つけないと神事屋は倒産ですは。(涙
by 神事屋 (2010-02-17 09:40) 

moimoi

鴨野さん

>子孫も相当数増えたであう・・・(プッ
今のおやじさんは、差し詰め10代目位でしょうか?(笑)

>まだしなければならないことが山のように残ってござるのに・・・(謎
おっと、お順との恋愛話が残っていましたね。
果たして、恋は成就するのであろうか?(爆)
by moimoi (2010-02-17 10:18) 

moimoi

神事屋さん

>昨年アタシも遊びに行きますた、中々の遊興所でした。
そうでしたか?
私はまだです。
烏賊の美味しい店もあるとか?

>黄金を見つけないと神事屋は倒産ですは。(涙
ぢゃ、早くブラカンに行ったら、その後、皆さんと合流しないとね!(笑)
by moimoi (2010-02-17 10:20) 

sakura

<衝撃の次回に続く・・・

(-。-)y-゜゜゜もしかしたら、最終回?
by sakura (2010-02-17 10:29) 

押車提督

>あれはここには御座りませぬ

えーーーーーーーーーーーーーーーーッ  ないの?ここに。。。
わしゃ長いことずっと待っとったのに... おいらも少なからずオカニ掛けとるんよ!!

昨年こそっとおいら提督と神事屋ちゃんは蚊淫汰へ遊びに逝ってますた(グエヘヘヘ・・・実は元々知り合いだったのですよ

終わりが少し長引きそうな気配でんなw(^o^)v


by 押車提督 (2010-02-17 10:33) 

moimoi

桜吹雪さん

>(-。-)y-゜゜゜もしかしたら、最終回?
そうです。
結局、黄金は見つからず、一座は解散!
神事屋さんは、杏屁令巣に永住。
萬久さんは、一生幽閉されたままだし、金さんは、戻ってこないと悲嘆に暮れる・・・
これで、どうですか?(爆)
by moimoi (2010-02-17 10:35) 

moimoi

オスカル辺銀提督さん

>実は元々知り合いだったのですよ
うわあ、そうだったのですか?(嘘笑)
私も、今度連れて行って下さいね。

>終わりが少し長引きそうな気配でんなw(^o^)v
自分でも驚いています!(爆)
by moimoi (2010-02-17 10:38) 

温

追いつきましたあ!!

連載後しばらくして嫁のごたごたで読む機会を逸したら一気に話しがすすんでいたので、いつか初めから読もうと思っていました

今日、一話目から一気読みしました

後から後からよく話しがでてきますね

これからはリアルタイムで読ませていただきます
by 温 (2010-02-17 22:46) 

moimoi

恩温穏さん

有難う御座います!(涙)
そういう方が居られてこそ、更新を続けてきた甲斐があると言うものです。
>後から後からよく話しがでてきますね
はい、口から出任せ八丁味噌ですから・・(笑)
>これからはリアルタイムで読ませていただきます
ブログにも、登場下さいね!(爆)
by moimoi (2010-02-17 23:22) 

こう平

無いんですか???黄金・・・。

山下財宝の様に迷宮入りか・・・・・。

ゆっくり、なが~く。書いて下さいね(>_<)

毎日楽しみですから!
by こう平 (2010-02-18 05:24) 

moimoi

こう平どん

あれれ、今日は遅いなあ・・(笑)
>山下財宝の様に迷宮入りか・・・・・。
見つかっても、黙っているだけではないの?

>ゆっくり、なが~く。書いて下さいね(>_<)
早く終わって、今回だけは完結したいのだが・・(爆)
by moimoi (2010-02-18 06:01) 

山小屋の住人

あ~やっぱり先を急いでいるんだ~。

わが一族は代々瀬戸内の海賊だったけど、いつの間にか山に登って山賊になっとんよ。
「船頭多くして船山に登る」なんちゃって~。

急展開?お仕事の都合?
by 山小屋の住人 (2010-02-18 07:38) 

moimoi

仙兵衛おかしらさん

>あ~やっぱり先を急いでいるんだ~。
急ぎたかったのですが、ついついいつもの癖で引っ張って仕舞いました!(笑

>「船頭多くして船山に登る」なんちゃって~。
流石関西の豪商、山奧屋の末裔ですね!
思い切り、ギャグが大阪してまっせー!(爆)
by moimoi (2010-02-18 08:11) 

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