幕末ピンパブ物語 呂宋編 第二十三回 『桃源郷』 [フィクション]
鴨野は、老人が消えた方向に駆け寄っていった。
すると驚いたことに、瀧の裏側から声が聞こえた。
『どうなされた、早く来なされ!』
鴨野は、目を凝らした。
よく見ると、瀧の裏側に側道があって、洞窟に繋がっているではないか?
鴨野は、その側道を通り、洞窟の中に入って行くことにした。
洞窟は、暫く歩くと何と奥が広まって居り、そこに、いきなり立派な門構えの、大きな屋敷が現れた。
まるで、唐の国のおとぎ話に出てくる、桃源郷のような光景がそこにある。
『ささ、こちらにおいでなされ・・・』
先程の老人が、門の中から手招きで呼んでいた。
鴨野も、その後に続く人々も皆それに従った。
中に入ると、そこは全くの日本の屋敷である。
安土桃山様式で、襖絵などは、狩野派の絵師が書いたと思われる、松や孔雀が描かれている。
鴨野達は、それらを目を見張って見ていたが、次第に、うっとりとしながら眺めるようになっていた。
『こ、これは素晴らしゅう御座る、ご老人、ここは、あなた様のお屋敷で御座いますかな?』
鴨野は、言葉と態度を改めてそう言った。
『ははは、お恥ずかしゅう御座いまする、いやいや申し遅れました、私はここ安泰幌の山中に隠れ棲む、山奧屋仙兵衛と申す者に御座いまする。』
山奧屋仙兵衛と名乗ったその老人は、室町作法に則った礼式で、慇懃に挨拶をした。
鴨野も慌てて答礼したが、人品卑しからぬその老人に、おっとりした中にも威圧感を感じていた。
老人は、いや訂正しておこう、人品卑しからぬその人物は、年の頃は鴨野と同じ還暦を過ぎたばかりのようだが、そのおっとりとした言葉使いや物腰など、何処から見ても只者とも思われなかった。
如何にも老成した風魂から老人に見紛うたが、髪はまだ黒ぐろとしていて若々しい。
作者は、ここまで書いてこう思った。
(これだけ持ち上げて置けば、今度訪問した時に、物凄い歓待があるに違いない・・・)
鴨野は、今こそ確信した。
この人物こそ、豊臣秀吉の迫害から馬尼羅に逃れてきた後、スペイン軍と戦って破れ、黄金を持って安泰幌に隠れ逃れたと言う 切支丹残党の首領、山奧屋鶴兵衛の子孫に違いないと言うことを。
鴨野がそのことを指摘すると仙兵衛は、『おーほっほっほ』、と笑うだけで、何も答えなかった。
肯定をする訳でも、否定をする訳でもない。
その時、一人の女性が茶道具を抱えて入ってきた。
『義妹の茶露(ちゃろ)に御座る。』
茶露と呼ばれた女性は、丁寧に鴨野達にお辞儀をした。
小柄だが、聡明な目つきをした、綺麗というより可愛らしい顔の女性である。
『ほう義妹殿で御座ったか?、して奥方殿は?』
鴨野がそう聞くと、生まれてまだ数ヶ月しか経たない子供の世話に疲れて、少々寝不足に襲われているので、自室で休んでいるらしい。
『さて、皆さんがここにおいでの理由は、大体想像が付き申しますが、どうして私達が日本語を喋り、日本の風俗をしているのか、少なからず、そのことに興味をお持ちのようですな・・・。』
仙兵衛は、一同を眺めるかのように首を回しながら、そう言った。
『その通りです。』
鴨野が、代表して頷いた。
皆もそうだそうだと、口々にさざめいた。
『では、お話申すことに致しましょう・・・。』
仙兵衛のその一言に、皆聞き耳を立てた。
続く・・・
すると驚いたことに、瀧の裏側から声が聞こえた。
『どうなされた、早く来なされ!』
鴨野は、目を凝らした。
よく見ると、瀧の裏側に側道があって、洞窟に繋がっているではないか?
鴨野は、その側道を通り、洞窟の中に入って行くことにした。
洞窟は、暫く歩くと何と奥が広まって居り、そこに、いきなり立派な門構えの、大きな屋敷が現れた。
まるで、唐の国のおとぎ話に出てくる、桃源郷のような光景がそこにある。
『ささ、こちらにおいでなされ・・・』
先程の老人が、門の中から手招きで呼んでいた。
鴨野も、その後に続く人々も皆それに従った。
中に入ると、そこは全くの日本の屋敷である。
安土桃山様式で、襖絵などは、狩野派の絵師が書いたと思われる、松や孔雀が描かれている。
鴨野達は、それらを目を見張って見ていたが、次第に、うっとりとしながら眺めるようになっていた。
『こ、これは素晴らしゅう御座る、ご老人、ここは、あなた様のお屋敷で御座いますかな?』
鴨野は、言葉と態度を改めてそう言った。
『ははは、お恥ずかしゅう御座いまする、いやいや申し遅れました、私はここ安泰幌の山中に隠れ棲む、山奧屋仙兵衛と申す者に御座いまする。』
山奧屋仙兵衛と名乗ったその老人は、室町作法に則った礼式で、慇懃に挨拶をした。
鴨野も慌てて答礼したが、人品卑しからぬその老人に、おっとりした中にも威圧感を感じていた。
老人は、いや訂正しておこう、人品卑しからぬその人物は、年の頃は鴨野と同じ還暦を過ぎたばかりのようだが、そのおっとりとした言葉使いや物腰など、何処から見ても只者とも思われなかった。
如何にも老成した風魂から老人に見紛うたが、髪はまだ黒ぐろとしていて若々しい。
作者は、ここまで書いてこう思った。
(これだけ持ち上げて置けば、今度訪問した時に、物凄い歓待があるに違いない・・・)
鴨野は、今こそ確信した。
この人物こそ、豊臣秀吉の迫害から馬尼羅に逃れてきた後、スペイン軍と戦って破れ、黄金を持って安泰幌に隠れ逃れたと言う 切支丹残党の首領、山奧屋鶴兵衛の子孫に違いないと言うことを。
鴨野がそのことを指摘すると仙兵衛は、『おーほっほっほ』、と笑うだけで、何も答えなかった。
肯定をする訳でも、否定をする訳でもない。
その時、一人の女性が茶道具を抱えて入ってきた。
『義妹の茶露(ちゃろ)に御座る。』
茶露と呼ばれた女性は、丁寧に鴨野達にお辞儀をした。
小柄だが、聡明な目つきをした、綺麗というより可愛らしい顔の女性である。
『ほう義妹殿で御座ったか?、して奥方殿は?』
鴨野がそう聞くと、生まれてまだ数ヶ月しか経たない子供の世話に疲れて、少々寝不足に襲われているので、自室で休んでいるらしい。
『さて、皆さんがここにおいでの理由は、大体想像が付き申しますが、どうして私達が日本語を喋り、日本の風俗をしているのか、少なからず、そのことに興味をお持ちのようですな・・・。』
仙兵衛は、一同を眺めるかのように首を回しながら、そう言った。
『その通りです。』
鴨野が、代表して頷いた。
皆もそうだそうだと、口々にさざめいた。
『では、お話申すことに致しましょう・・・。』
仙兵衛のその一言に、皆聞き耳を立てた。
続く・・・
2010-02-16 06:16
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コメント(16)
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おはようございます、連日の更新
お疲れ様です。
by sakura (2010-02-16 07:40)
滝の奥に立派なお屋敷があったのですか?
山奧屋鶴兵衛の子孫の山奧屋仙兵衛と名乗る御仁は、呂栄国に住みながら日本のしきたり・習慣・風俗で生活してる理由があるのですか・・・(謎
財宝はどうなるのか・・・(プッ
by kamono (2010-02-16 08:23)
この時代になぜ日本の屋敷が作れたのか?
不思議です。
しかも襖絵など持ってきたのでしょうか?
仲間に職人がいたのか?
by 萬久 (2010-02-16 08:44)
おぉチャロさんまで登場っすか!?なかなか仙兵衛さんちの実生活が。。。
中庭の鯉が泳いでいる池の水を抜けば、財宝の在り処が分かるかもw
by 押車提督 (2010-02-16 09:02)
(゚ρ゚)アウゥですなぁ
by (´ρ`) (2010-02-16 09:30)
桜吹雪の金さん
おはよう御座います。
>お疲れ様です。
昨夜は、飲み疲れました!(笑)
by moimoi (2010-02-16 10:39)
鴨野さん
え~、先走りはいけませんよ、先走りは・・(笑)
明日の更新をお楽しみに!
by moimoi (2010-02-16 10:42)
萬久さん
え~、先走りはいけませんよ、先走りは②・・(笑)
明日、全て明らかになります!
by moimoi (2010-02-16 10:43)
オスカル提督
>なかなか仙兵衛さんちの実生活が。。。
ギャハハハ、克明過ぎましたか?(笑)
>庭の鯉が泳いでいる池の水を抜けば、財宝の在り処が分かるかもw
え~、先走りはいけませんよ、先走りは③・・(笑)
by moimoi (2010-02-16 10:46)
とろ吉さん
>(゚ρ゚)アウゥですなぁ
え~、先走りはいけませんよ、先走りは④・・(笑)
by moimoi (2010-02-16 10:49)
お~ほっほっほっ!
茶露さんも登場ですね?(笑)
髪も黒々・・・・。
作者さんの嫉妬ですね(爆)
by こう平 (2010-02-16 14:28)
こう平どん
>作者さんの嫉妬ですね
髪の黒さには執着はありません。
んが、髪の多さには執着はありますよ!(爆)
by moimoi (2010-02-16 16:08)
山の親父さんを持ち上げるよりはもっともっと茶露さんを褒め称えたほうが山荘へ訪問時には歓待を受けると思うよ。
by 神事屋 (2010-02-16 16:20)
神事屋さん
>茶露さんを褒め称えたほうが山荘へ訪問時には歓待を受けると思うよ。
なるほど、その手があったか?(爆)
by moimoi (2010-02-16 16:47)
茶露(ちゃろ)さん登場ですかぁ。
これはよめなかったなあ。
そして一同は・・・・・
茶露さんの巻物絵販売で購入した西洋靴を履いて
またまた財宝探しの旅に出かけるのであった。(爆
by あらん (2010-02-16 17:16)
阿鸞さん
>茶露さんの巻物絵販売で購入した西洋靴を履いて
またまた財宝探しの旅に出かけるのであった。
その案も頂き!(爆)
by moimoi (2010-02-16 17:30)