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ダンとゆく、インファンタの旅 後編 [番外編]

夜が明けてきました。


まだ、暗がりですが、恒例の、朝の散歩の始まりです。
ここから、数キロ先のピースポートという港まで、歩きます。


外はまだ暗いですが、既に漁師の釣り舟が海に出ています。

実は、ここの海には、恐怖の思い出があるのです。
忘れもしない、丁度8年前の、1999年の11月18日のことでした。
当時、バクラーランに住んでいた私は、この時初めて、ダンについて、この海までやってきました。 一緒に同行したのは、近所の歯医者のおじいさんで、Dr.ダンゴイ(当時76歳)と、同じく歯医者仲間の、Dr.チン(当時74歳)です。

運転手を含む、合計5人で行ったのですが、着いた当日の午後、フィッシングをするべく、小さなバンカーボートを、チャーターすることになりました。
波は穏やかでしたが、釣果は上がりません。
二人の船頭に相談して、もう少し、沖へ出ましょうということで、沖に向かいましたが、3時間近く、釣りをして、何も釣れないので、帰ることにしました。

その時のことです。 急に風が吹き出し、海が荒れてきました。
船頭と云っても、一人は当時22歳、もう一人は何と、15歳の子供でした。
帰りを急いでいる時、強い横風が吹き、本来なら、風の吹いてくる反対の方向に、舵をきるべきですが、何を考えたのか、船頭は風の吹いている方向に、舵を合わせてしまったのです。

一瞬にして、船は横倒しになり、当然のように、全員、海に投げ出されました。
バンカーですから、脇に沈まないように、ウイングがついているので、沈みませんでしたが、みんな必死で、それにしがみつきました。
ご老体の二人も、何とかしがみついてきました。 私が、その真中にいて、二人を両脇に挟み込みました。 反対側のウイングには、ダンと、二人の船頭がしがみついています。

海は、益々荒れてきました。
この時点で、午後の3時半です。
助けてくれる船を捜しますが、うねりも激しくなり、とうとう雷や、雨まで落ちてきて、見廻してみても、、私達のバンカーだけしかいません。
風が冷たくて、首から下は、海水に浸かっている方が、暖かく感じるくらいです。

1時間が過ぎました。
私は、二人のご老体を、両脇に抱えていましたが、彼らは、体力を徐々に失っていくように見受けられます。
その時、ダンが云いました。
『こうなったら、一かばちか、誰かが岸まで泳いで助けを呼んでくるしかない。』

白羽の矢は、15歳の船頭見習に当たりました。
丁度その時、発泡スチロールが流れてきましたので、彼はそれを掴んで、岸まで泳いで行くことにしました。
危険な賭けでしたが、これも仕方はありません。
状況は、どんどん悪くなっていましたから・・・・

その後、また1時間が経過しましたが、助けの船は、姿をみせず、海の状況は、益々ひどくなっていくばかりです。
私は、ズボンのポケットにあった、釣り糸で、二人の老人を、私の体に結びつけようとしました。 彼らが力尽きて、ウイングを掴んでいる手が、離れた場合の用心の為でしたが、Dr.ダンゴイが、それを押さえて、私に云いました。

『いやいや、そんなことは必要ないよ。あんたはまだ若いから、助かる見込みがある。わし達は年寄りだから、万が一死んだら、もう仕方がないんだよ!』
もう一人のDr.チンも、同じことを云って、私の行為に反対します。
そうは云われても、お構いなしに私は、無理やり釣り糸で、二人を縛ってしまいました。 時間は、容赦なく経過していきます。

とうとう、海に投げ出されて、3時間半が経過しようとしていました。
午後7時、あたりはもう真っ暗です。
最初は見えていた岸べの家の明かりも、何時の間にか見えなくなっていました。
かなり、流されてきたようです。
二人の老人は、ぐったりとし、私も絶望し、生をあきらめかけた瞬間、反対側にしがみついていたダンが、大きな声で叫びました。

船です。
明かりをつけた、船が見えてきました。 どうやら、漁船のようです。
(助かった!)
私はそう思い、大きな声で、気づいて貰えるように、大きな声で叫びます。
ダンが、頭に巻いていた、白いタオルを振ります。

船は、大型のバンカーでしたが、気づいてくれたのか、こちらに近寄ってきます。
波は相変わらず激しく、助けの船は、中々近づいて来れませんでしたが、しばらくして、ロープを投げてくれたので、ダンが、それを掴んで、そのバンカーに結び付けました。 20分後、ようやく接近できたバンカーに乗り移ろうと、まず、二人のご老体を、船の上に押し上げようとしましたが、弱っているのか、なかなか這い上がっては呉れません。

しまいには、『わし達には、無理だから、ここへおいてゆけ!』、とまで云います。
我々が弱っていたその時、もう一隻のバンカーボートが、近づいてきました。
Philippines Coast Guard(海上保安隊)の、旗を掲げたバンカーです。
どうやら、助けを求めて泳いでいった少年が、呼んで来たものに相違ありません。
彼らの助けを得て、何とか全員、無事救出されたのです。

急死に一生を得た我々ですが、私が去年まで、ここを再訪したくなかったのは、こういう理由があったのです。
去年は、残念ながら会う機会がなかったので、今年は、その時ひっくり返ったバンカーと、助けに泳いでいった少年に会いたいと、思っていました。
ダンにそう云うと、そのバンカーを見せてくれました。


これが、その時のバンカーボートです。
最近では使われていなくなり、陸上に飾られたままだそうです。

この朝の、散歩の帰り道に、偶然なのですが、当時15歳だった、船頭見習の、ロエル君にも再開することが出来ました。


ダンも、8年ぶりに出会ったそうです。

3人で当時を振り返って、感慨深いものがありました。
彼は暗くなりつつある中で、これを目指して、泳いだそうです。


命の恩人の、灯台ですね!

さて、帰る時間です。
お土産には、やっぱり魚でしょう!
昨日に比べ、少しは水揚げがあったようで、次々とバンカーボートが帰ってきます。


マヤマヤです。1kgが200ペソと高価ですが、刺身にするととても美味しいですね!
三匹で2.5kg、500ペソでした。
帰った夜は、さっそく刺身で頂きました♪♪
残りは、味噌漬に・・・・さて味はどうかな?

この他、しま鯵やラプラプ、糸よりなど、沢山仕入れて帰ったのは、云うまでもありません。

ダンは、これを買いました。
この魚・・・


カンパチでしょうか? 4kgありました。 660ペソ!

いやあ、新鮮な魚はやみ付きになりますね!!
ダンに、クリスマスに又行こうと、約束してしまいました!!!

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hiro

家では、3枚に下ろして半分刺身で残りは塩焼きです。
骨は別途塩焼きにしてスープに入れます。
頭は、シニガンスープにしています。
考えたら刺身をワサビで食べた事がありません。
何時も、生姜とかニンニク醤油です。
昔は良くクーラボックスに氷を入れて日本に持ち帰りました。
by hiro (2007-12-04 10:35) 

Yamachang

いや~、凄い体験をされましたね。
バンカーは所詮日本の泥舟程度の大きさですよね。
船体の両脇に平行を保つための竹で出来た支えが有りますね。
皆さん無事に救出されよかったですが、
>Dr.ダンゴイ(当時76歳)と、同じく歯医者仲間の、Dr.チン(当時74歳)です。
このお二人はもうお亡くなりになられたのですか?
15歳のロエル君も成人され漁師をされてるのでしょうか?
バンカーで沖に出るのはチョット勇気がいりますね。
漁果よりも安全が第一ですよね。
by Yamachang (2007-12-04 11:02) 

shinji

水の怖さを私も体験した事が有ります、45年前くらいの小学生の頃
自宅近くの川で泳いでいたときに深みにはまりアップアップしパニ
クッて沈んでしまいもう駄目だと思ったときに近くにいた青年の方に
助けられた事が有ります。
その水の恐怖から立ち直るために中学では水泳部に入りました、お陰で
今は泳ぎはそこそこ出来ますが、体力が落ちていますから多分Dr,と同じになるでしょうね。(ToT)
写真を見ていると半そで半ズボンのフィリピンが恋しいです、ここ日本は
凍えるほど寒いですよぉぉ、、、
by shinji (2007-12-04 12:25) 

moimoi

hiroさん

わさびは、使われませんか?
生姜か、にんにく醤油、それもいいですね!
今度、試してみましょう!
長崎県の五島列島福江島では、刺身を豆板醤で食べていました。
所変われば・・・ですね!
by moimoi (2007-12-04 12:45) 

moimoi

Yamachangさん

>このお二人はもうお亡くなりになられたのですか?
生きてますよ~!!
最近は見ていませんが、まだまだピンピンだそうです。
84と82歳ですね!
助かった後、記念のパーティを、Dr.チンの家で開きました。
すごく可愛い、お孫さんがいて、印象的でした!(笑)

ロエル君は、蟹専門の漁師になっていました。
会って話をしましたが、かれも、感慨深げに当時の話をしていました。
やはり、沖に出るには、バンカーの大きさが足りなかったようです。
by moimoi (2007-12-04 12:53) 

moimoi

sinjiさん

そういう経験をお持ちでしたか!?
古い経験でも、恐怖を覚えたものは、いつまで経っても、忘れられないものですね!
水泳は、逆療法だったのですね!
それで克服できたのは、良かったと思います。
こちらも、寒気が入っていて肌寒いですが、短パンTシャツで、まだまだいけますよ~!!!
by moimoi (2007-12-04 13:00) 

hiro

たまに買わなくてはと思っても何時も忘れています。
ワサビを蕎麦とか素麺を持っていく時は余分に持って行きます。
by hiro (2007-12-04 13:29) 

imus0216

このふねに鉄じーが乗ってればまた展開がかわっていたかも?

そうすれば鉄ジイシリーズガもう少し継続できたのですねー

鉄ジー・・・海で災難か?

なんて感じで・・・次は必ず参加させて下さい!
by imus0216 (2007-12-04 13:48) 

裂空ミスキタ

凄い体験談聞かせて頂き有難う御座いまつ

moimoiさん

刺身は何で食されるのでつかぁ…やはり大蒜、生姜でつかぁ?

最近の日本では百円ショップでチューブの練り山葵が売ってまつ…ピリピンでは練り山葵は売っているんでつかね?
by 裂空ミスキタ (2007-12-04 18:02) 

harajuku

こんばんは。
まさに九死に一生ですね!
昔何かで読んだのですが、海に投げ出された人の死因って寒さによる凍死なんかよりも、絶望感から心臓が停止して死亡してしまうケースが非常に多いということでした。
ですから、一人で漂っている場合の方が、死亡率が高いとか。
moimoiさんの場合、仲間がたくさんいたことが幸いだったのかもしれませんね!
by harajuku (2007-12-04 22:54) 

sabang

とんでもない おちょこちょいの船頭さんですね。
それでも助かったのは、やはり運が強いのですよ。
私ならトラウマになって、暫くは水に近づけなくなりそうです。
by sabang (2007-12-05 00:14) 

junsbar

今晩は
だらだらしていたら3時近くになっていました。
また明日、コメントを書きに来ます。
ゆっくり読みたいので
昨日も4時
駄目
眠たい
by junsbar (2007-12-05 02:48) 

junsbar

おはようございます。
結局寝るのが面倒なのでそのまま起きていました。
多分、本日は理由をつけて喫茶店で昼寝でしょうか
最近は海にも行きませんが
昔は、大好きで1年中行っていました
釣りも潜りも
それにしても大変な経験をしましたね。

友人と本当に良い休日 
最近この様な事まったくありません
どうも私の周囲はインドア派ばかりでいけません
by junsbar (2007-12-05 06:04) 

moimoi

hiroさん

買わなくては思っていても、忘れることって多いですね!
家に帰って、いつも後悔している私です。
by moimoi (2007-12-05 07:17) 

moimoi

imus0216さん

>鉄ジー・・・海で災難か?
いいストーリーでしたね(笑)
採用すれば良かった!(爆)
次回は是非参加して下さいね!!!
by moimoi (2007-12-05 07:20) 

moimoi

裂空ミスキタさん

思い出したくもない体験でしたが、語ってしまいました!(笑)
あの日から、私は生まれ変わったと思っています。
何せ、新しい命を貰ったようなものですから・・・

ワサビは、スーパーマーケットや、日本食料品店で売っています。
日本製ならいいのですが、台湾製など怪しいワサビもあるので、注意が必要です。
早く、釣りへ行きましょう!!!
by moimoi (2007-12-05 07:24) 

moimoi

harajukuさん

そうですか!?
仲間がいたから、助かったのですね!
一人では、さすがに絶望していたかも知れません。
恐い経験でしたが、人間一度はこういう経験もいいですね!!!
by moimoi (2007-12-05 07:27) 

moimoi

sabangさん

私は、余程神経がおかしいのでしょうか?
この1ヵ月半後の正月に、サバンビーチでバンカーに乗って釣りをしていました。(笑)
ダンにそれを云うと、気違いと言われましたが・・・・
釣りは好きなので、やめられません!!!
by moimoi (2007-12-05 07:30) 

moimoi

junsbarさん

おはよう御座います!
結局、徹夜でしょうか?
ご苦労様でした!
喫茶店で昼寝!
昔は良くやっていましたね!(笑)
漫画を見ながら、うとうとと・・・・

アウトドアはいいですね!
家の中に閉じこもってばかりでは、いいアイデアも浮かびません。
仕事も遊びも、視点を変えていかないと楽しくないですね!!!
by moimoi (2007-12-05 07:35) 

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