幕末ピンパブ物語 第二十一回 [フィクション]
『うおう、旦那様~』
馬造が、悲鳴を上げた。
『お、おう、うっ馬造ではないか、無事じゃったのか?』
鴨野が馬造に近づいて、その肩を手でがっしりと抱いてやった。
馬造は、その場に平伏して、頭を地にこすりつけながら謝り続けている。
お欄は、神事屋と萬久の姿を見ると、逃げ出そうとしたが、何処にも逃げる場所が無かったので、その場にへたへたと座り込んだ。
『お欄、逃げる必要などないんじゃよ!』
神事屋が、そう言った。
『これも皆、そこに居られる北町奉行の遠山様のお計らいなのじゃ、安心せい。』
鴨野もそう言って金さんに一礼し、馬造にも頭を上げるよう諭した。
金さんが、奉行の遠山様だったと聞いて、馬造は、魂が吹き飛ぶほど驚いた。
しかし、オールスター大運動会ではあるまいに、出演者がほぼ一同に集うなどあり得ないだろう。
大橋ととろ吉、こう平弁当夫婦には、さっぱりと分からない。
いや作者ですら、これは理解が出来なかった。
これは、金さんから説明してして貰うしかあるまい。
満場からの拍手に迎えられながら、金さんが居酒屋のお立ち台に立った。
おもむろにマイクを持つと、こう述べ始めたのである。
『え~、只今ご紹介に預かりました、江戸の庶民の味方、全てはお見通しの、お節介焼きのでえく(大工)の金公こと、遊び人の金さん、又の名を遠山左衛門尉景元と申しやす。』
金さんの演説は流暢だ。
『え~、皆様にお集まり頂いたのは、他でも御座いやせん、本日はお日柄も良く、天気晴朗なれど波高し、新郎新婦のお二人を始め、御両家の皆様には、謹んでお喜びを・・・』
『金さん、金さん!』
大橋が、慌てて止めた。
『それ、違いますよ・・』
『おっといけねえ、挨拶を間違えちまったぜ、勘弁してくんな。』
金さんは、頭を掻いたが、大橋は金玉を掻いた。
一同、どっと笑う。
冗談はさて置き、金さんの説明とはこうである。
馬造の供述の通り、全てを調べ上げた金さんは、三河屋が、裏の稼業、占い師古希麻呂と同一人物であることも突き止めたし、三河屋の寮のことや、協力者の大橋虎造のことも調べ上げた。
勿論、お欄の働き場所であった神事屋のことや、密貿易のことなども調査の段階で分かった。
しかし、今回は罪に問う気は無いと言う。
それには、理由があったのだ。
問題は、幕府の財政にある。
幕末、幕府の財政は殆ど危機的状態になっていた。
相次ぐ飢饉で、米の収入がない上、諸大名の台頭で、経済が中央より地方に流れる傾向にあった。
それに対し、幕府の御家人は、旗本八万騎と称されるように、多くの家臣達を養っている。
このままいけば、幕府は早晩、破産してしまうのは間違いない。
危機感を抱いた、時の老中阿部伊勢守正弘は、そのことを遠山左衛門尉景元に相談した。
阿部には、目算があった。
豊臣秀吉が呂宋島と交易していた頃の話、高名な呂宋の壺を大量に収集していた秀吉は、大船団を組み、大量の金貨を船に積んで、堺の港を出港させた。
船団が、正にマニラに着こうとした時、その悲劇は起こったのである。
秀吉のキリシタン追放令で、マニラに逃げ渡った、大名の家来や商人、農民たちが一体となって結成した軍団に、襲われてしまった。
その額、天正大判小判で、総額百万両以上と言われている。
その金は、その時に首領であった人物の所に隠されていたが、彼の軍団も、当時マニラを支配していたスペイン人提督と争って破れ、その金が、そのまま行方不明になってしまっていたと言うのだ。
続く・・・・
馬造が、悲鳴を上げた。
『お、おう、うっ馬造ではないか、無事じゃったのか?』
鴨野が馬造に近づいて、その肩を手でがっしりと抱いてやった。
馬造は、その場に平伏して、頭を地にこすりつけながら謝り続けている。
お欄は、神事屋と萬久の姿を見ると、逃げ出そうとしたが、何処にも逃げる場所が無かったので、その場にへたへたと座り込んだ。
『お欄、逃げる必要などないんじゃよ!』
神事屋が、そう言った。
『これも皆、そこに居られる北町奉行の遠山様のお計らいなのじゃ、安心せい。』
鴨野もそう言って金さんに一礼し、馬造にも頭を上げるよう諭した。
金さんが、奉行の遠山様だったと聞いて、馬造は、魂が吹き飛ぶほど驚いた。
しかし、オールスター大運動会ではあるまいに、出演者がほぼ一同に集うなどあり得ないだろう。
大橋ととろ吉、こう平弁当夫婦には、さっぱりと分からない。
いや作者ですら、これは理解が出来なかった。
これは、金さんから説明してして貰うしかあるまい。
満場からの拍手に迎えられながら、金さんが居酒屋のお立ち台に立った。
おもむろにマイクを持つと、こう述べ始めたのである。
『え~、只今ご紹介に預かりました、江戸の庶民の味方、全てはお見通しの、お節介焼きのでえく(大工)の金公こと、遊び人の金さん、又の名を遠山左衛門尉景元と申しやす。』
金さんの演説は流暢だ。
『え~、皆様にお集まり頂いたのは、他でも御座いやせん、本日はお日柄も良く、天気晴朗なれど波高し、新郎新婦のお二人を始め、御両家の皆様には、謹んでお喜びを・・・』
『金さん、金さん!』
大橋が、慌てて止めた。
『それ、違いますよ・・』
『おっといけねえ、挨拶を間違えちまったぜ、勘弁してくんな。』
金さんは、頭を掻いたが、大橋は金玉を掻いた。
一同、どっと笑う。
冗談はさて置き、金さんの説明とはこうである。
馬造の供述の通り、全てを調べ上げた金さんは、三河屋が、裏の稼業、占い師古希麻呂と同一人物であることも突き止めたし、三河屋の寮のことや、協力者の大橋虎造のことも調べ上げた。
勿論、お欄の働き場所であった神事屋のことや、密貿易のことなども調査の段階で分かった。
しかし、今回は罪に問う気は無いと言う。
それには、理由があったのだ。
問題は、幕府の財政にある。
幕末、幕府の財政は殆ど危機的状態になっていた。
相次ぐ飢饉で、米の収入がない上、諸大名の台頭で、経済が中央より地方に流れる傾向にあった。
それに対し、幕府の御家人は、旗本八万騎と称されるように、多くの家臣達を養っている。
このままいけば、幕府は早晩、破産してしまうのは間違いない。
危機感を抱いた、時の老中阿部伊勢守正弘は、そのことを遠山左衛門尉景元に相談した。
阿部には、目算があった。
豊臣秀吉が呂宋島と交易していた頃の話、高名な呂宋の壺を大量に収集していた秀吉は、大船団を組み、大量の金貨を船に積んで、堺の港を出港させた。
船団が、正にマニラに着こうとした時、その悲劇は起こったのである。
秀吉のキリシタン追放令で、マニラに逃げ渡った、大名の家来や商人、農民たちが一体となって結成した軍団に、襲われてしまった。
その額、天正大判小判で、総額百万両以上と言われている。
その金は、その時に首領であった人物の所に隠されていたが、彼の軍団も、当時マニラを支配していたスペイン人提督と争って破れ、その金が、そのまま行方不明になってしまっていたと言うのだ。
続く・・・・
2010-01-18 06:26
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コメント(20)
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(-。-)y-゜゜゜
押車サンノトウジョウデスカ?
by sakura (2010-01-18 07:48)
展開が広がりました。
山下財宝の話は聞いたことがありますが、秀吉の時代の総額百万両以上
の金が行方不明になっているとは、喉から手の出るほどの話・・・
いよいよ舞台は呂宋島に移る予感・・・(笑
ワタシ フィリピン ノ コトバ ワカリマセン
ダレカ オシエテ クレマスカ?
by kamono (2010-01-18 10:04)
黒肌の金さん
オスカー提督ですか?(笑)
ははは、もちろんご登場になりますよ!
by moimoi (2010-01-18 10:22)
鴨野さん
予期せぬ展開でしょうか?(笑)
呂宋編、ご家老鴨野氏は、ついて来られるのか?(謎)
押車さん、山仙人さんの出番は如何に・・・・?
あ~、ストーリの構成が大変じゃああああああ・・・(爆)
by moimoi (2010-01-18 10:38)
提督!?。。。 今回は、おいらスペイン人け?
by 押車 (2010-01-18 11:24)
押車さん
げげげええええええ、嫌なの?(笑)
オスカー.デラクルース。
奥さんは、美人なので、デラべっぴんさん(爆)
by moimoi (2010-01-18 12:10)
コメントしずれ~~~ぇ。奴隷商人だけはやめて!(爆
by 山から下りて行けないおやじ (2010-01-18 12:24)
山仙人さん
えっ、奴隷商人がお好きでしたか?
では、ご希望通りに・・・(笑)
もしかして、呂宋編でも山から降りられないかも・・(爆)
by moimoi (2010-01-18 12:59)
展開はや・・・・・・
きちんと話はつながるのでしょうな?
(´ρ`)だな
by (´ρ`) (2010-01-18 13:48)
とろ吉さん
モチリン!
明日の更新で、明らかになるでしょう。
by moimoi (2010-01-18 14:26)
三河屋も呂栄に行きたいとか(台湾経由で…)(^^ゞ
by こき麻呂(^^ゞ (2010-01-18 14:38)
三河屋さん
三河屋さんは、別便になっています。(笑)
でも、台湾経由がいいのですか?
う~ん、台湾は行ったことが無いですからねえ・・
まあ、火鍋を出しておけばいいか?(爆)
by moimoi (2010-01-18 15:08)
ハッピーエンドかと思いきや・・・・。
取りあえず島流しの刑はま逃れたぁ~(笑)
by こう平 (2010-01-18 17:49)
こう平さん
えっ、島流しの刑がハッピーエンド?(笑)
ぢゃ、こう平だけは打首にしておこうかなあ・・・(爆)
by moimoi (2010-01-18 20:14)
思ってもみない展開・・・
今後のつながりに期待です。
しかし幕末の事をよく調べましたね!
by 萬久 (2010-01-18 20:45)
萬久さん
時代考証は、しないでね!(笑)
私でも、思ってもみなかった展開です。(マジ)
続きが楽しみです!(爆)
by moimoi (2010-01-18 21:12)
うーん。そうかあ、それで皆でルソンに出かけるわけですね?(爆
たのしみぢゃー!
by 馬造 (2010-01-18 22:57)
8日間連続の更新 すごーい♪
そして、気付いたら左上に「主な登場人物」まであるじゃないですか!
作者の並々ならぬ、創作意欲が感じます^^
なので、『幕末ピンパブ物語』は、必ずや完結するに違いない!(爆
で、物語はルソンに続く・・・ のですね♪
by 菩薩 (2010-01-19 00:46)
馬造さん
>たのしみぢゃー!
喜んで良いのかなあ・・・
どんでん返しがあるかもね、イヒヒヒヒ!(爆)
by moimoi (2010-01-19 05:08)
菩薩さん
>8日間連続の更新 すごーい♪
あれれ、今気づいたのですか?
・・て言う事は、読んでいませんでしたね?(笑)
>なので、『幕末ピンパブ物語』は、必ずや完結するに違いない!
あ~、やはり信用されてなかったんだ!(爆)
by moimoi (2010-01-19 05:10)