幕末ピンパブ物語 第二十二回

金さんの話は、佳境に入ってきた。
首領の男は、スペイン提督軍と戦って敗れたが、少数の部下と一緒に、命からがらに逃れた。
スペイン総督は、その財宝のことも聞いていたので後を追ったが、見つけることは出来なかった。
その後、その男達がどうなったかは、定かではない。
マニラを離れて、山奥にでも姿を隠したというのが、スペイン提督軍の見解である。

そのままになっていれば、この話が後世に伝えられることはなく、徳川幕府の知ることにはならなかったであろうが、如何せん、記録が残ってしまった。
しかも、スペイン側にである。
当時のスペイン提督は、ラスカル．デラクルーズという名前であった。
実は、彼が財宝のことを、日記を残していたのだ。

その日記も、提督が退任したときに本国に持ち帰られ、彼の死後、誰の目にも触れられず、家の倉庫に埋もれたままになってしまった。
数代後に在呂宋提督になった、彼の子孫であるオスカル．デラクルーズが偶然それを見つけ、探そうと試みたが情報が乏しく叶えられなかった。
この為彼は、開国したばかりの徳川幕府に、調査を依頼したのである。

依頼を受けた当の幕府は、長い間の鎖国政策が敷かれていたので、呂宋国には疎かった。
話は頓挫しかけたが、今回の事件が勃発したばっかりに、却って道は開けたと言える。
金さんは、馬造の話を聞いて、『うむこれだ』と、ハタと膝を打った。
馬造とお欄の供述から、神事屋が呂宋国と密貿易をしているのが判明した。
しかも、大胆にも呂宋娘を連れてきて、呂宋茶屋なるものを開いている。

財宝の在処（ありか）を探るには、呂宋国に通じた彼らが適任であろう。
そう思い、自ら神事屋に赴き、鴨野や又場まで招いて、この話を聞かせたのである。
馬造とお欄が拐かされた話には、正直驚いた鴨野達だが、呂宋行きの話には乗り気になった。
居酒屋で、皆を集めて話をしようと、こうなったわけである。
そうなると、やばい問題が持ち上がった。

三河屋のことである。
彼のことを立件してしまうと、皆の罪も問わねばならない。
いい塩梅に、大橋の一発で、三河屋は気を失ってしまった。
その隙に、大橋ととろ吉も誘い出せたのだが、こうなったら呉越同舟、みんなで助け合いながら、呂宋に行って欲しいというのが金さんの本音である。

『但しなあ、費用が出ねえんだ、幕府の財政は、もう情けねえくらい疲弊しちまってさあ、だからよう、今回のことは、おいらが頭を下げてお願えしてるんだ！』
金さんは、そう言うと深々と頭を下げた。
要するに、幕府には金がない。
皆の罪は問わないかわりに、呂宋に行って、スペイン提督に協力して欲しいと言う話である。

既に、スペイン提督とは、分け前の分配率の話はついている。
後は、実行に移すだけであった。
『あたしは、やりますぜ！』
神事屋は、真っ先に手を上げた。
『拙者も、参加致す！』

大橋も、そう言った。
『私は・・・・・』
鴨野が、苦渋の顔をして喋り始めた。
『う～ん、主持ちの身で御座れば、異国の地へ旅などとは、如何せん・・・』
そこまで言うと、がっかりした表情でうなだれた。

『鴨野殿、それならば隠居されたら如何ですか？、家督を息子さんに譲っては？』
良庵が、そう言った。
『おお、そう言う手があったか！？』
鴨野の表情が、一遍に明るくなった。
『私も行きます、お欄を連れて・・・』

馬造が、どさくさに紛れてそう言った。
そうすると、金さんがそれを遮ってこう言った。
『お前は留守番じゃ、主人公のくせに滅多にコメントを入れないからと、作者が怒っておる！』
『え～、お奉行様～、作者様～、お願いだから連れてって下さいよ～』
馬造は顔をくしゃくしゃにして、泣きべそをかきながら、そう叫んだ。


あはははははは、続きやがれ・・・！（爆）

コメント 22

キンサンノキンサガシ？(-。-)y-゜゜゜
by sakura (2010-01-19 06:00) 

桜吹雪の金さん

金さんの金隠しでなくて良かったです。
大橋さんは、隠しませんが・・・（爆）
by moimoi (2010-01-19 07:08) 

金さんは日本に居残りですか？

まさか金さんも隠居して同行？

by 萬久 (2010-01-19 08:43) 

萬久さん

え～、コメントの少ない人と子どもが生まれたばかりの人は、居残りになりました！（爆、爆、爆）
by moimoi (2010-01-19 08:55) 

隠居の身で夢の呂宋国へ・・・(^.^)/

神事屋さんは既に抜け荷の件で何度か呂宋国に渡航されてるので
国情はご存知なんですね、特に花街は・・・（期待大

新撰組やら尊王攘夷論やらの面倒な紛争より、
冬のない常夏で生涯を閉じたいぞよ・・・（笑

上の左欄の登場人物の説明も年寄りには有難いですよ・・・(微笑



by kamono (2010-01-19 09:26) 

金探しの冒険ですね？

昔、金太の大冒険！(つぼいのりお)と言う歌が有りましたね（笑）

またまだ続く～(^0^)/
by こう平 (2010-01-19 11:09) 

オスカルでは無くラスカルですか、いよいよ呂宋国に舞台が移りますな、天子の街も描いて下され。（激望
by shiNji (2010-01-19 11:36) 

┐(´д｀)┌ﾔﾚﾔﾚ
by (´ρ`) (2010-01-19 12:50) 

鴨野さん

とうとう呂宋逝きが決まりましたね！（笑）
このまま移住しちまいましょうか？（笑）
＞上の左欄の登場人物の説明も年寄りには有難いですよ・・・(微笑
とろ吉さんに指摘を受けて拵えました。
まだまだ登場人物が増えるので、覚悟して下さいね！（爆）

by moimoi (2010-01-19 14:05) 

こう平どん

＞金太の大冒険！
年齢の差をかんじるなあ・・・（苦笑）
ところで、こう平夫婦は居残り組？（爆）
by moimoi (2010-01-19 14:07) 

神事屋さん

え～、先を突っ込まないように・・・
先祖がラスカルなら、子孫は勿論。。。。ですよね！（冷や汗）
by moimoi (2010-01-19 14:08) 

とろ吉さん

コメントの簡素化はいけませんよ！（笑）
by moimoi (2010-01-19 14:09) 

>コメントの少ない人と子どもが生まれたばかりの人は、居残りになりました！

はて誰のことやら？
・・・・・私でしょうか？

子供のために単身赴任も厭いません！！！
そのほうがありがたい鴨（爆

by 萬久 (2010-01-19 14:13) 

萬久さん

おやおや、呂宋と言う悪魔に魂を売るのですね！（笑）
ガハハ、仕方がないから、今回は連れて参りましょう！
でもコメントがないと、直ぐに海に落ちたりするのでご注意を・・・（爆）
by moimoi (2010-01-19 14:43) 

>滅多にコメントを入れないからと、作者が怒っておる！』
ややっ　　これはいかん＞＜
コメント、コメント（笑

あのぉ～　　アコは行けるのでしょうか？
by 良庵 (2010-01-19 17:02) 

良庵さん

＞あのぉ～　　アコは行けるのでしょうか？
お～ほっほっほ！
勿論です良庵先生。
黄金捜索隊に、医者殿がいないと皆が困ります。（笑）
大橋さんの、二日酔いの薬も調合して貰わないと・・・（爆）

by moimoi (2010-01-19 17:25) 

コメントが多いと出番も多くなると聞いて２回目のコメントです。

私の指名のお順との関係はどうなるでしょうか？

作者の都合も顧みず勝手にコメントします。
お気になさって下さい・・・（爆

冗談はさておき、ｽﾄｰﾘの構想もおありでしょうが、
出演者の名称が年寄りでも連想できれば幸いです。
今のところは連想・妄想出来れる範囲です・・・（笑

神事屋さんとか押車さんとかのお名前は的を射てて素晴らしいです・・・（微笑

by kamono (2010-01-19 17:33) 

９日連続の更新・・・どこまで記録を伸ばせるのだろうか？（爆

＞呉越同舟、みんなで助け合いながら

　舟に乗りながら、釣りとかするんでしょうね～♪
　船酔いするのは、だ～れっかな～？＾＾


by 菩薩 (2010-01-20 00:10) 

鴨野さん

お順さん、忘れてはいませんよ。（笑）
ちゃんと重要な役所で活躍？して頂く予定です。
＞お気になさって下さい・・・（爆
コメント率１００％の鴨野さんだけは、この物語で、唯一生き残れるでしょうね！（爆）
by moimoi (2010-01-20 06:50) 

菩薩さん

＞９日連続の更新・・・どこまで記録を伸ばせるのだろうか？
うえへへへ、土曜日までの記事はストックがあります。
その後は、野となれ山となれですな！（笑）
釣りは、作者が好きなだけにあるでしょうねえ・・
問題は、船酔いよりも誰が船から落ちるかでしょうか？（爆）
by moimoi (2010-01-20 06:54) 

勘弁してくださいよ師匠（涙

僕のコメ待ちて・・・・

皆様すみません・・・・これからはちゃんとコメント入れます。

てか馬が主人公なんですか？呂宋に連れて行ってくださいましいいいい！
by 馬尼羅 (2010-01-20 09:14) 

馬造さん

やっと入りましたね！
これからは素直に入れましょう！
さもないと、海から落ちる羽目に・・・（爆）
by moimoi (2010-01-20 09:17)