SSブログ

幕末ピンパブ物語 第二十三回 [フィクション]

『許してくだされ、許してくだされ』
馬造は、金さんの周りを、念仏踊りを踊るように拝みながら回った。
あまりにしつこいので、金さんも呆れてこう言った。
『ええい、今度だけは許してやる、次回からは必ずコメを入れるのだぞ、皆の者も分かったな!?』
『へへえ~』

一同、承服して平伏した。
こう平と弁当の夫婦も行くことを承知したし、良庵も、医師として同行することになった。
居酒屋の亭主松五郎も、金さんの代理で参加である。
費用は、神事屋と鴨野がその多くを負わなければならない。
金さんも、これでほっとしたのであろう。

老中に報告してくるからと、その居酒屋を後にした。
金さんがいなくなると、皆で話し合いあが始まった。
問題は、誰がこの集団のボスになるかである。
それぞれが、勝手なことをことをやっていたのでは、収集が付かないのは当たり前だ。
年の功と身分から、鴨野が選出されたのは言うまでもない。

こうして、大呂宋国黄金探偵団は、結成されたのであった。
事は急がなくてはならない。
鴨野は早々に隠居届けを、大橋は南町奉行に、休暇願いを出しに行かなくてはならない。
この点、こう平と弁当夫婦、馬造やとろ吉は気楽なものである。
今となっては、どうせ三河屋には戻れない。

こうなったら、財宝探しでもやって、少しでも分け前に預かった方がましである。
彼らは、気楽に考えていた。
しかしである。
まだ彼ら一行には、恐ろしい敵が控えていることを、知るよしもなかった。
それは、三河屋である。

三河屋が大橋に殴られて気を失った後、金さんが、大橋ととろ吉を連れ出したまでは書いた。
ところが、その跡をつけていた男がいたのだ。
三河屋が可愛がっている甲賀者だが、回船問屋の傍ら抜荷もやっている三河屋なので、非常の折には、大変役に立つ男ということで雇っていたのだ。
本名はなく、異名を菩薩(ボディ)と言う。

菩薩とはサンスクリット語だが、甲賀時代に、忍びの師匠がつけて呉れたらしい。
菩薩のような顔立ちをしているので、忍びだとは誰にも思われないだろうからと、そう名付けられた。
金さんにまでつけられているのを気付かれなかった位だから、忍びの腕は相当だったと言っていい。
菩薩は、普段は店の下働きとして働いているので、本当に目立たない存在なのである。
そんな男につけられた上、居酒屋での事の顛末を、全て聞かれてしまっていたとはお粗末な話だ。

菩薩は自分の店まで帰ると、気絶から覚めた三河屋に、全てを報告してしまった。
三河屋が激怒したのは、言うまでもない。
反面、狂喜もした。
こうなれば、奴らの鼻を開かして、黄金を奪いとってやるしかない。
この日から、彼は復讐の鬼となった。

特に彼を裏切った、大橋、とろ吉、こう平、弁当には、憎んでも憎み切れない程である。
そうとも知らぬ一行は、呂宋に出発する日を夢見て、準備を着々と進めている。
鴨野には隠居願いが、大橋にも休暇届けが、何とか無事に受理された。
後の金策は、神事屋が殆ど一手に引き受けた。
そうしていよいよ一行が、呂宋に旅立つ日を迎えたのである!


『呂宋編』に続く・・・
nice!(1)  コメント(24)  トラックバック(0) 

nice! 1

コメント 24

馬造

おおお!良かった。金さん有難う御座います!

うひひひ!これで呂宋に逝けますな。

本領発揮!(爆
by 馬造 (2010-01-20 09:45) 

moimoi

馬造さん

コメント一番乗り、おめでとう御座います!(笑)
呂宋逝きのチケットは手に出来ましたが、到着するまで命があるかどうかは、これからのコメント次第ですな!(爆)
本領発揮してね!
by moimoi (2010-01-20 09:53) 

kamono

菩薩さんとは本編以外で面識があります・・・(プッ
昨年の江戸での寄り合いに招かれそこで初めてお会いしました・・・(微笑

名は体をあらわすと言いますが、菩薩様に負けないお顔です。
ただお体が細身で胃下垂体質と勝手に解釈してます・・・(笑

呂宋国では誰が水先案内人をされるのであろうか?
先人の高山右近殿はすでに200年前に呂宋国の土に帰ってしまっていた時代でした・・・(合掌

*高山右近・・・右近は俗称、本名は友祥(ともなが)、長房(ながふさ)又は重友(しげとも)など複数伝わり、判然としない。通称は彦五郎。有名な右近の呼び名は私的な名で、正式な官位としては大蔵少輔までなっている。洗礼名はユスト。茶道を究めた右近は「南坊」と号し、千利休の七高弟(利休七哲)の一人としても知られる。
慶長19年(1614年)、加賀で暮らしていた右近はキリシタン追放令を受けて、人々の引きとめる中、加賀を退去した。長崎から家族とともに追放された内藤如安らと共にマニラに送られる船に乗り、マニラに12月に到着した。イエズス会報告や宣教師の報告で有名となっていた右近はマニラでスペイン人のフィリピン総督、フアン・デ・シルバらから大歓迎を受けた。しかし、船旅の疲れや慣れない気候のため62歳の右近はすぐに病を得て、翌年の2月4日に息を引き取った。64歳。

葬儀は総督の指示によってマニラ全市をあげてイントラムロスの中にあった聖アンナ教会で盛大に行われた。右近の死後、その家族は日本に帰国し、現在石川県羽咋郡志賀町代田、福井県福井市、大分県大分市に直系子孫の3つの「高山家」がある。

参考資料:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より抜粋


by kamono (2010-01-20 09:54) 

moimoi

鴨野さん

参考記事ありがとう御座います。
高山右近については時代が違うので、敢えて秀吉の、伴天連追放令を使いました。
黄金をあそこまで用意出来るのは、秀吉しかいなかったからです。
実際に、呂宋に追放された大名が見当たらなかったので、迫害により流れてきた武士や商人や農民の集団という設定にしました。
さて、現地の案内人ですが、勿論神事屋の支店の人間に間違いないでしょう。
今、その人選に頭を悩めてる最中です!(爆)
by moimoi (2010-01-20 10:09) 

熱が出て寝ていた虎造

すみませんが具合が悪くなり寝てました。

先ほどすべて読みましたが・・・・

急展開なのね?

本日より行動開始ですは。
by 熱が出て寝ていた虎造 (2010-01-20 11:16) 

moimoi

大橋さん

松に聞きました。
派手に暴れたそうですね!(笑)
もう良くなりましたか?
>本日より行動開始ですは。
頑張って下さいね!
by moimoi (2010-01-20 11:25) 

神事屋

えぇ~~ 皆様にはエコノミーシートでご勘弁をオニガイします。
by 神事屋 (2010-01-20 11:53) 

sakura

(^。^)y-.。o○イッテラッサ~イ
by sakura (2010-01-20 11:58) 

(´ρ`)

なんだかなぁ・・

殺されて良いので

コメントはこれで最後にしましょうw
by (´ρ`) (2010-01-20 12:16) 

moimoi

神事屋さん

>皆様にはエコノミーシートでご勘弁をオニガイします。
まあ、船のオーナで金主だからなあ・・・(苦笑)
で、あの船にシルバーシートはありましたっけ?(爆)
by moimoi (2010-01-20 12:18) 

moimoi

桜吹雪の金さん

役職柄、今回は置いてけ堀になりましたね。(サーヤン)
お土産を、お楽しみに~!(笑)
by moimoi (2010-01-20 12:21) 

moimoi

とろ吉さん

>コメントはこれで最後にしましょうw
あなたがいないと盛り上がりません。
最後まで見届けてね!(笑)
by moimoi (2010-01-20 12:22) 

通りすがり

初めまして
面白そうなブログなので最初から全部読ませて頂きました。
今回の小説も面白くていつも腹を抱えて読んでます。
登場される人物は何だか実在する方々のようですね。
これからも楽しみにしています。

by 通りすがり (2010-01-20 14:07) 

moimoi

通りすがりさん

ご愛読、有難う御座います。
>登場される人物は何だか実在する方々のようですね。
このブログにもリンクしてあります、フィリピンコミュニティというSNSのメンバーの皆さんが登場しています。
メンバー同士が情報を交換しあったり、双方向で対話をする場所になっています。
興味がありましたら、是非、お入り下さいね。
今後とも、宜しくお願いします!
by moimoi (2010-01-20 14:50) 

こき麻呂(^^ゞ

いよいよマニラですね。(*^▽^*)
by こき麻呂(^^ゞ (2010-01-20 17:04) 

kamono

通りすがりさん、
ご訪問、作者に増して出演者としてお礼申し上げます・・・(ペコリ

>登場される人物は何だか実在する方々のようですね。
この作者は何の許可もなく出演させてるのです。
勿論出演料も貰っていませんし個人情報保護法の認可も受けてません。
まして要望もしてません。
作者に歯向かえば極悪人にもし立てられます・・・(笑

以前の物語は作者ご自身の体験を基に構成された作品が多かったのですが、前々回からはフィリピンコミュニティのメンバーさんを随所に配置し、
面白おかしく誇張し、文学的な作品になるべく努めているように感じます。

多分直木賞か芥川賞の賞金を秘かに狙っているのではと推測してます。
その折には是非通りすがりさんも授賞式後の懇談会に参加し、
作者のお顔をじっくり拝んで下さい。
必ずご利益があると思います。

作者様、
拙い説明でしたが如何だったでしょうか・・・(大笑

by kamono (2010-01-20 17:05) 

moimoi

三河屋さん

まだまだ、航海でのトラブルが待ち構えていることでしょうね!
あれっ、邪魔をするのは三河屋さんでしょ?(爆)
by moimoi (2010-01-20 17:14) 

moimoi

鴨野さん

>この作者は何の許可もなく出演させてるのです。
がはははは、ごく親しい方には、断っておりません!(大汗)
物語初登場の方には、一応出演の可否はお聞きしています。(笑)

>作者に歯向かえば極悪人にもし立てられます・・・(笑
いえいえ、作者の一方通行で物語を組み立てるより、コメントを使って、双方向で物語を完成しようとしているだけです。

何せ今までの物語と違い、モデルもいませんし、隠れたテーマもありません。
英造さんの物語が、頓挫したのもそのせいですね。
今回は、コメで反応を見ながら、物語を書いております。

要するに、想像力のみで書いているので、反応がないと止まってしまうのです。(苦笑)
これでは、どんな賞も頂けませんね。
せめて、『象印笑』くらいは狙わないと・・・(爆)
by moimoi (2010-01-20 17:27) 

こう平

まだ作者さんは登場しませんね(笑)

とにかく馬造さんのコメが有って見ることが出来て

良かったです(爆)
by こう平 (2010-01-20 19:18) 

萬久

あの~私めはどうすればよろしいのでしょうか?・・・(涙
まさか日本にてお留守番でしょうか?・・・(滝涙

涙涙涙涙涙

by 萬久 (2010-01-20 20:00) 

忍びの菩薩

うふふ^^ 忍びとしての登場 かっこいいです♪(大喜

忍びとして素性を明かすと、命取りではあるが、
菩薩の師匠は、服部半蔵の手下であったといわれ、
その子孫は、世界(特に呂宋)の悪と戦うが姿を見せない為、
服部半蔵にちなんで服部児玉と呼ばれている。
心がきれいな者にしか見えないとも言われ、
大企業の会長・社長を影で動かす存在とも言われている。
(ちょこっと Wikipedia を参照)


横レス 失礼します。

鴨野殿  拙者 所謂 胃下垂体質 候 故如何 (笑


       








by 忍びの菩薩 (2010-01-20 22:33) 

moimoi

こう平さん

作者は、いずれ登場するでしょう!
馬造さんは、主人公と言うか、みんなのアイドルなので外せません!(笑)
これからも、楽しく逝きましょうね!!
by moimoi (2010-01-20 22:41) 

moimoi

萬久さん

あれれ、乗船名簿に載っていませんでしたか?(笑)
心配ありません!
ちゃんと一緒ですよ。
と言うより、重要な役目が待っています。
心して、お待ち下さいね!(爆)
by moimoi (2010-01-20 22:44) 

moimoi

菩薩さん

とうとう登場されましたね!
ナイスな自己紹介も、大歓迎ですよ。
公儀お庭番・・・
八代将軍吉宗以降、代々、伊賀の衆が引き継いで来ました。
講談では、幕府開設以来、服部家が統括してきた役職になっているようです。
さて、敵方になっていますが、無事に財宝の在処を探すことが出来るのか?
重要な役どころですよ!
活躍して下さいね!(笑)
by moimoi (2010-01-20 22:54) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。