幕末ピンパブ物語 呂宋編 第二回 [フィクション]
『おおい、馬よ~!』
大橋が叫んだ。
『へーい。』
馬造が、走って来てそう答えた。
『味噌が足りねえ、ちょっくら倉庫まで行って、取ってきてくんな。』
『へえ、合点でさあ大虎兄さん!』
馬造は、大橋とすっかり仲良くなり、と言うより力関係で押さえつけられてだが・・・、今では、強制的に弟分にさせられてしまっていた。
大橋には、既にとろ吉と言う弟分がいたので、馬造は、そのとろ吉の弟分ということにもなる。
従ってとろ吉にも、『とろ兄さん』、と呼ばなければならない馬造であった。
大橋は、配下のとろ吉や馬造、こう平夫婦を手足のように使い、船内の賄いを一切請け負っている。
まあ、副艦長兼調理長でもあるので当然のことだが、居酒屋の亭主であった松五郎には、これが一番の不満であった。
伊賀の忍びとして、金さんの密偵を勤めていたが、料理好きなのは、大橋には負けていない。
いや、江戸調理人組合の調理師免許を持っていただけに、プライドが許さなかったのである。
(いつかは、おれが調理長の座を奪ってやる・・・)
密かに、機会を伺う松五郎であった。
怒涛丸は、やっと出航したばかりだと云うのに、もう暗雲が立ち込め始めているようだ。
乗組員の洗濯は、もっぱらお欄とお順がやってくれていた。
言うのを忘れていたが、お順も呂宋に一時帰国したいと言うので、神事屋が許可をしていたのだ。
萬久は、自分の嫁に子供が生まれたばかりなので、この航海に参加するのは消極的だったが、主人(あるじ)の神事屋が行くと言うので、従わざるを得なかった。
だから、出港後も子供の事が気になるのか、ため息ばかりをついている毎日だ。
良庵は、悠々自適、何処に居ようが、風の如くふわふわと、ゆったりしている。
水野晴郎ばりの笑顔で、人々に明るさを振りまいていた。
一応平穏無事に見える怒涛丸の船内ではあるが、一歩間違えば、嵐が吹くに違いなかった。
その嵐は、松五郎であり、弁当夫婦であり、馬造とお欄であるかも知れない。
外部からは、復讐に燃えた三河屋だっている。
そんな中、一人幸せな思いに耽っていたのは、艦長の鴨野であった。
何しろ、指名子のお順が一緒に乗船しているのだ。
落ち着けと言っても、無理であろう。
神事屋など、みんなの手前もあるから、思いに耽るだけにしているが、還暦を過ぎた鴨野とて、男であることには違いはない。
洗濯物を頼む時にや、食事の時に給仕をしてくれるお順を見る時などは、年甲斐もなく、どぎまぎしてしまうのだから仕方がなかった。
『葱屋』に飲みに出掛けていた頃は、夜であったし、あまり飲めないながら少しでも酒が入っていたので、恥ずかしさは感じずに済んだが、こう朝から夜まで狭い船内で顔を見ていると、そうもいかない。
はっきり言って、目のやりどころに困るのだ。
根が純情だからやむを得ないが、お順の方でも、満更でない笑顔を鴨野に送るので余計であった。
この恋が成就するのかどうかは、作者でさえ知り得ないが・・・
航海は順調で、僅か3日目で瀬戸内海を通りすぎようとしている。
気の緩みが出たのであろう。
滅多なことでは酒は飲むまいと、皆で誓い合っていたのだが、大橋がそれを守れるはずはなかった。
『こんなに海は凪(なぎ)だし、今晩くれえ酒を飲んでもええだべなよ~、とろ吉い?』
『へえ大虎の兄貴、じゃあ、少し馬造に言って、酒を調達してくるように言いやしょうか?』
続く・・・・・
新着記事:『えっ、神事屋が馬造を虐待!?』
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100122-00000002-maip-soci
大橋が叫んだ。
『へーい。』
馬造が、走って来てそう答えた。
『味噌が足りねえ、ちょっくら倉庫まで行って、取ってきてくんな。』
『へえ、合点でさあ大虎兄さん!』
馬造は、大橋とすっかり仲良くなり、と言うより力関係で押さえつけられてだが・・・、今では、強制的に弟分にさせられてしまっていた。
大橋には、既にとろ吉と言う弟分がいたので、馬造は、そのとろ吉の弟分ということにもなる。
従ってとろ吉にも、『とろ兄さん』、と呼ばなければならない馬造であった。
大橋は、配下のとろ吉や馬造、こう平夫婦を手足のように使い、船内の賄いを一切請け負っている。
まあ、副艦長兼調理長でもあるので当然のことだが、居酒屋の亭主であった松五郎には、これが一番の不満であった。
伊賀の忍びとして、金さんの密偵を勤めていたが、料理好きなのは、大橋には負けていない。
いや、江戸調理人組合の調理師免許を持っていただけに、プライドが許さなかったのである。
(いつかは、おれが調理長の座を奪ってやる・・・)
密かに、機会を伺う松五郎であった。
怒涛丸は、やっと出航したばかりだと云うのに、もう暗雲が立ち込め始めているようだ。
乗組員の洗濯は、もっぱらお欄とお順がやってくれていた。
言うのを忘れていたが、お順も呂宋に一時帰国したいと言うので、神事屋が許可をしていたのだ。
萬久は、自分の嫁に子供が生まれたばかりなので、この航海に参加するのは消極的だったが、主人(あるじ)の神事屋が行くと言うので、従わざるを得なかった。
だから、出港後も子供の事が気になるのか、ため息ばかりをついている毎日だ。
良庵は、悠々自適、何処に居ようが、風の如くふわふわと、ゆったりしている。
水野晴郎ばりの笑顔で、人々に明るさを振りまいていた。
一応平穏無事に見える怒涛丸の船内ではあるが、一歩間違えば、嵐が吹くに違いなかった。
その嵐は、松五郎であり、弁当夫婦であり、馬造とお欄であるかも知れない。
外部からは、復讐に燃えた三河屋だっている。
そんな中、一人幸せな思いに耽っていたのは、艦長の鴨野であった。
何しろ、指名子のお順が一緒に乗船しているのだ。
落ち着けと言っても、無理であろう。
神事屋など、みんなの手前もあるから、思いに耽るだけにしているが、還暦を過ぎた鴨野とて、男であることには違いはない。
洗濯物を頼む時にや、食事の時に給仕をしてくれるお順を見る時などは、年甲斐もなく、どぎまぎしてしまうのだから仕方がなかった。
『葱屋』に飲みに出掛けていた頃は、夜であったし、あまり飲めないながら少しでも酒が入っていたので、恥ずかしさは感じずに済んだが、こう朝から夜まで狭い船内で顔を見ていると、そうもいかない。
はっきり言って、目のやりどころに困るのだ。
根が純情だからやむを得ないが、お順の方でも、満更でない笑顔を鴨野に送るので余計であった。
この恋が成就するのかどうかは、作者でさえ知り得ないが・・・
航海は順調で、僅か3日目で瀬戸内海を通りすぎようとしている。
気の緩みが出たのであろう。
滅多なことでは酒は飲むまいと、皆で誓い合っていたのだが、大橋がそれを守れるはずはなかった。
『こんなに海は凪(なぎ)だし、今晩くれえ酒を飲んでもええだべなよ~、とろ吉い?』
『へえ大虎の兄貴、じゃあ、少し馬造に言って、酒を調達してくるように言いやしょうか?』
続く・・・・・
新着記事:『えっ、神事屋が馬造を虐待!?』
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100122-00000002-maip-soci
2010-01-22 05:31
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コメント(24)
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大虎兄貴と、とろ兄貴が酒盛り?(>_<)
波乱の予感が・・・・・。
弁当には決して飲まさないように(爆)
by こう平 (2010-01-22 07:41)
こう平さん
>波乱の予感が・・・・・。
まあ、期待通りの展開ですな!(笑)
>弁当には決して飲まさないように(爆)
おお、その手があったか!?(爆)
by moimoi (2010-01-22 07:52)
着物の下の尻のラインが好きなんですよ・・・(ニタリ
大橋氏、とろ吉氏、馬造氏、アルコールに目のない人ばかりですから、
一度飲み出したら終わりがないでしょう・・・(苦笑
神事屋さんも良庵さんも三河屋さんも以前何度か同席させて頂いた
記憶があります。
女子もそこそこ、飲むほどに騒ぐほどに朗らかな酒飲みでした・・・(微笑
松は古くからの知り合いです、馬との関係が笑えます・・・(プッ
いつかどこかで日記にしたためましょうか・・・(爆
by kamono (2010-01-22 08:57)
>出港後も子供の事が気になるのか、ため息ばかりをついている毎日だ。
ため息をつきながら実は心の中ではワクワクしています(笑
ところでまっちゃんはこのブログを見ているんですかね?
まだコメントないようですが・・・
by 萬久 (2010-01-22 08:59)
↑
松はパソコンありませんし全く興味もない男です(笑)
なんで松の店手伝いしているのに争う事になるのかなー
酒飲んで暴れるのですか?
否定はあえてしませんが・・・・・埋める
今宵も顔出してきます。昨晩は7リンですた。
一番危険なのはやはりおいらなのかなー
鉄じーより危険人物のイメージが定着するのが怖いですは(涙)
by 大橋虎造 (2010-01-22 09:15)
鴨野さん
>一度飲み出したら終わりがないでしょう・・・(苦笑
説明の必要がないので楽です。(笑)
>いつかどこかで日記にしたためましょうか・・・(爆
暴露本、待ってます!(爆)
>物の下の尻のラインが好きなんですよ・・・(ニタリ
基本的に足フェチの私には、ちょっと・・・(苦笑)
by moimoi (2010-01-22 09:36)
萬久さん
松は、典型的なアナログ人間です!(笑)
お子さん、可愛いでしょう。
そろそろ里心がついて、帰りたくなるのでは・・・?(爆)
by moimoi (2010-01-22 09:38)
大橋さん
>酒飲んで暴れるのですか?
まあ、一度はこれを使わないとね!(笑)
>なんで松の店手伝いしているのに争う事になるのかなー
まあ、物語ですから・・・(ガハハ)
>鉄じーより危険人物のイメージが定着するのが怖いですは(涙)
超える日も、もうすぐですな!(爆)
by moimoi (2010-01-22 09:41)
どんどん近づいてくるご一行様を迎えるために、何かパーティを催さなければならないですな。。。
そのため現在マグロを仕入に、駄婆雄に汽船で着ている提督ですらw
来週は呂宋に戻りますわ^o^/""
by 押車提督 (2010-01-22 11:53)
┐(´д`)┌ヤレヤレ
とうとう次か・・・・・・・爆
今度休みのときにちょっと飲んでみるかなぁー
by (´ρ`) (2010-01-22 12:04)
鴨野殿は律儀な性格ゆえ呂宋国のお順の田舎の実家へ親御様に挨拶に往かれるのでしょうね。
by shiNji (2010-01-22 16:09)
神事屋さんは流石鴨野の心を読まれていますな・・・(笑
困ったことに呂宋国には見目麗しい美女が大勢で目移りするらしいですよ。
それと作者が鴨野の自由行動をどれほど取り入れてくれるかはまだ未定ですよ・・・(恥笑
by kamono (2010-01-22 17:09)
う~ん 昨年のことでありますが、アイスペールを想像してしまいます^^
やっぱり、誰か舟から落ちるのか!?
by 菩薩 (2010-01-22 21:29)
↑嫌だなあ・・・・決まってるぢゃないですかあ(血涙
二人の酒飲みが飲み始めたら・・・弄られ役は僕。
で、アイスペールはこの時代ありませんから、多分桶かなんかでしょうね(涙
日本酒は効きますよ。
さてと、いつ落とされても良い様に準備運動しとこう。
by 馬造 (2010-01-22 21:40)
押車提督
出番が待ち遠しいのですが、もう少しお待ち下さいね!
歓迎パーティの料理の、準備はオニガイします。
馬が、腹を空かせて待っているそうですよ!(爆)
by moimoi (2010-01-23 07:32)
とろ吉さん
たまには息抜きをいたしませう!(笑)
会社のおやびんが帰ってきたので、私は当分付き合えません。(涙)
昨日も、午前様だす!
by moimoi (2010-01-23 07:35)
馬造を虐待した神事屋さん(爆)
>御様に挨拶に往かれるのでしょうね。
結納の準備をされるそうです。(笑)
所で、仲人はやはり神事屋さんですよね!(爆)
by moimoi (2010-01-23 07:38)
鴨野さん
えっ、まだ目移りするのですか?(笑)
これはいかん!
お順に知らせないと・・・(爆)
by moimoi (2010-01-23 07:42)
菩薩さん
>アイスペールを想像してしまいます^^
西洋バケツのことですか?(笑)
>やっぱり、誰か舟から落ちるのか!?
時間の問題かと・・・(爆)
by moimoi (2010-01-23 07:44)
>新着記事:『えっ、神事屋が馬造を虐待!?』
(^。^)y-.。o○コレガ1バン。
by sakura (2010-01-23 07:46)
馬造さん
>嫌だなあ・・・・決まってるぢゃないですかあ(血涙
まあ、お約束だから。。。(笑)
>二人の酒飲みが飲み始めたら・・・弄られ役は僕。
人気者は辛いねえ・・・(涙)
>多分桶かなんかでしょうね(涙
飼い葉桶だろうね・・・(爆)
by moimoi (2010-01-23 07:46)
金さん
>(^。^)y-.。o○コレガ1バン。
本文は何処に行ったの、本文は?(瀧涙)
by moimoi (2010-01-23 07:48)
みなさんのコメントを読んでいたら、肝心の物語の内容をまた読み返さないと、忘れてしまいます。
それを毎回繰り返しています。(アルツハイマーー?)
by 山から下りて行けないおやじ (2010-01-23 10:14)
山仙人さん
>それを毎回繰り返しています。(アルツハイマーー?)
私も、前の記事を読まないと続きが書けません。(笑)
似たものどうしですね!(爆)
by moimoi (2010-01-23 10:43)