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幕末ピンパブ物語 呂宋編 第七回 [フィクション]

松五郎が狂った原因は、誰にも分からなかった。
弁当が放った一本背負いは、伊賀の忍びの手練でさえ、完膚なきまでに叩きつけた。
弁当は元々、柔の術を習っていたのだ。
しかし、あの技を皆の前で見せたことで、弁当は持て囃され、株は凄く上がったが、こう平はますます頭が上がらなくなるであろう。

実に恐ろしい嫁を、持ってしまった男ではある。
松五郎は、1晩寝て落ち着いたが、当然のごとく当面謹慎、大橋の調理長復活である。
松五郎は、軽い記憶喪失になったようで、記憶が曖昧で、自分が何をしたのかも覚えていない。
まあ、大橋達にとっては好都合であろう。
別に復讐の為では無く、台所の酒を盗もうとして行為に及んだのであるが、思わぬ結果になった。

まあ、元の鞘に納まったのであるから、喜びは隠さない大橋である。
とろ吉、馬造を従えて、せっせと料理を作る毎日が続いた。
『怒涛丸』は、琉球国に入った。
陸地は、これで最後である。
ここで最後の食料や水を、大量に仕入れなければならない。

大橋は、とろ吉に命じて、泡盛をこっそりと買い付けさせたのは言うまでもない。
懲りない男だが、まるで水滸伝に出てくる、『天殺星 李逵』のようだ。
単純明快で、分かりやすい性格である。
琉球を過ぎると、猛烈な嵐が襲ってきた。
退避しようにも、どこにも港も無いと云うのに、大変な荒れようである。

鴨野は、皆に慌てぬよう指示を出し、自分にも覚悟を決めさせ、歯を食い縛りながら指揮をとった。
船の揺れは、半端ではない。
叩きつけるような波は、容赦なく甲板を襲い、人々を恐怖のどん底に落とし入れた。
男も女も、身体を寄せ合い、励まし合いながら、嵐の過ぎ去るのを待つしか無い。
嵐は丁度、二日二晩でようやく治まって来た。

夜が明けたが、うねりはまだ残っている。
皆、食うものも食わずに嵐と戦ってきたので、空腹だったのに向けて、嵐の収まりと同時に、一辺に食料を胃に入れたものだから、胃が受け付けずに、げえげえと吐き出すものが続出してきたのだ。
船酔いの一種であろうが、特に身体の弱い女連中は酷かった。
中でも重症であったのが、お順である。

何にも食べることが出来ずに、日に日にやつれていくのが、目に見えて分かった。
一番心配しているのは、勿論鴨野である。
殆ど、寝ずの看病と言って良い。
献身的なばかりの、尽くしようであった。
食べ物は大橋に頼んで柔らかくして貰ったり、背中が痛いといえば、何時間でも揉んでやった。

以前、『葱屋』の店の中では、お客と割りきって、幾分営業的な態度で接していたお順であるが、今回の鴨野の看病は、心に染みて嬉しかった。
遠く呂宋から連れてこられて、日本で不安な毎日を過ごしたが、こうして優しい鴨野と知り合え、しかも一時ではあるが、一緒に帰国することが出来るのである。
こうなったら、早く治りたいような治りたくないような、複雑な気分であった。

日ならずして、お順は回復したが、今度は鴨野が倒れてしまった。
明らかに看病疲れが出たのか、咳と高熱が出た。
今度はお順が必死で看病したし、良庵先生の薬が効いたのか、そう長引かずに収まった。
心配していた神事屋を始め、萬久、大橋、とろ吉、こう平なども、ほっとした。
ひとり馬造だけは、『あれくらいでくたばる人じゃないよ~』、と言って、酒をかっ食らっていたが・・・


え~い、この罰当たりめが!、と言いながら続く・・・


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コメント 18

萬久

当然お順は鴨野どの好みの炉利顔なんですよね?(プッ

後光師匠のイミテーション結婚を心待ちにしています(爆
来月くらいでしょうか?
by 萬久 (2010-01-27 08:49) 

moimoi

萬久さん

>来月くらいでしょうか?
高級松阪牛と交換でしょうか?(爆)

>当然お順は鴨野どの好みの炉利顔なんですよね?(プッ
描写をすっかり忘れていましたね。
ていうより、苦手なんですよねえ。。。(涙)
by moimoi (2010-01-27 09:30) 

kamono

船の長旅は大変であるのう・・・(苦笑

幸い揉め事で皆の絆が深まった気がするのは私一人ではあるまい・・・(プッ

萬久殿の疑問にお答えしましょう・・・(恥

当然二十歳前の番茶も出花の18歳、子供と大人が混在してる
可愛い奴です・・・(爆
昔ならおニャン子くらぶ・モーニング娘。今ならAKB48のような歌って踊って
スタイルの良いフィリピーナです・・・(微笑

作者に相談もせず勝手に妄想で書き込みました・・・(笑

by kamono (2010-01-27 09:46) 

moimoi

鴨野さん

雨降って、地固まるでしょうね。
しかし、妄想を膨らますのも乙ではないですか?(笑)
股間を膨らませんるのは、もう少し後ですね!(爆)
by moimoi (2010-01-27 10:25) 

大橋虎造

航海には目印となる灯台が重要です。

しかしこの船には灯台などいりません・・・・・・

ミスターイラウと呼ばれる謎の外国人が船にのりこんできて夜な夜な甲板に出て海面を照らしているのです。

終に光師匠登場か?????

馬の言いそうな言葉ですね。

恩を仇で返すのが得意技の馬造ですね(笑)

by 大橋虎造 (2010-01-27 12:07) 

(´ρ`)

リアルで( ゚Д゚)ウマが吐くせりふですなw
しかしまぁ・・・船なんですよね・・・w

はてさて作者はこれから先をどうするのやら
ここまで来て自分を出さないってことはあるまいねw
by (´ρ`) (2010-01-27 12:17) 

こう平

料理酒を奪う為に大変な目に合った松さんですが結局、大橋さんは料理酒は飲めたんでしょうか(笑)

>『あれくらいでくたばる人じゃないよ~』

何かリアルですね(>_<)
by こう平 (2010-01-27 13:21) 

moimoi

大橋虎造さん

光師匠は、出たくないと言っています。
雲隠れして、光を与えたくないそうです。(笑)
>恩を仇で返すのが得意技の馬造ですね(笑)
おいおい駄目だよ、本当のこと言っちゃあ・・・(爆)

by moimoi (2010-01-27 13:51) 

moimoi

とろ吉さん

>はてさて作者はこれから先をどうするのやら
簡単です。
船を沈めれば終わりです(嘘笑)
>ここまで来て自分を出さないってことはあるまいねw
そんなにおいらを出したいのね・・・
役柄が、思いつかないから没ね!
by moimoi (2010-01-27 13:54) 

moimoi

こう平どん

料理酒は、調理長になれば自由自在でしょう!(笑)
>何かリアルですね(>_<)
おいおい、おまいさんまでそんなことを・・・
大丈夫かい馬よ・・・(涙)
by moimoi (2010-01-27 13:57) 

sakura

(-。-メ)y-.。o○リアル。
by sakura (2010-01-27 14:02) 

shiNji

いいなぁ~ 鴨野殿はLoveLoveですな!(ブォ
by shiNji (2010-01-27 14:20) 

moimoi

桜吹雪の金さん

>(-。-メ)y-.。o○リアル。

激涙、滝涙、棒涙、爆涙・・・・・・・・
by moimoi (2010-01-27 14:35) 

moimoi

神事屋さん

人をうらやましがっていては駄目ですぞ!(笑)
神事屋さんにも、そろそろ活躍を願わねばなりませんな!
by moimoi (2010-01-27 14:36) 

馬造

え~随分と可愛らしい書き方ですね。

『あれくらいでくたばる人じゃないよ~』

僕が言ったのは、

『殺しても死なないよ』

と、言ったのです(爆
by 馬造 (2010-01-27 15:04) 

moimoi

馬造さん

>『殺しても死なないよ』
ひえ~ざんのえんりゃくじい~
あなた、すみたいなあ・・
こころ、れいぞうこね!(ばく)

by moimoi (2010-01-27 17:58) 

ブログのタイトルから丸太の家と思われたロロ

この小説の登場人物は、読者が自由にイメージを指定できるそうですね。
あらすじも?
by ブログのタイトルから丸太の家と思われたロロ (2010-01-27 22:25) 

moimoi

ブログのタイトルから丸太の家と思われたロロさん

恐れ入りました!
登場人物もあらすじも、御自分の中で自由に描いて下さいね!(笑)
by moimoi (2010-01-27 23:52) 

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