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幕末ピンパブ物語 呂宋編 第十七回 『強敵登場!』 [フィクション]

萬久の取り出した火薬弾で、松五郎は、忍者としての誇りを取り戻した。
(もうちょいとで、お奉行様の信頼に傷を付ける所だったぜ。)
北町奉行、遠山金四郎の密偵であった自分を、やっと思い出した松五郎である。
調理人勝負で大橋に挑んだことを、今更ながらに恥じた。
(とにかく、萬久の野郎くせえぜ・・・、暫く見張っていよう。)

そう心に誓う、松五郎であった。
松五郎と同じく、萬久に疑問を持った人物がもう一人いる。
医師の、又場良庵であった。
医者と言うものは、人間を観察することには長けているものだ。
顔色や声色などを、常に観察する癖が付いている良庵は、萬久の変化に気づいていたのだ。

但し、憶測だけで、滅多なことは人に言えるものではない。
確かな証拠を掴んだ後で、鴨野に報告する積りでいる良庵である。
二人の人間から、監視されているとも知らない菩薩は、上手くごまかせたと胸を撫でおろした。
さしもの甲賀の手練忍者でも、自信過剰になれば脆いものだ。
忍者も人の子、自分の腕に自惚れたときに、敗北がやってくる。

一行は、それから二日の行程で、とうとう安泰幌の麓までやってきた。
弁当は、女ながらに達者な足で、夫のこう平が疲れた時には、背負ってやるくらいの強者だ。
但し、酒癖は非常に悪く、前回のウエルカムパーティーの時などは、大橋と大酒の飲み比べで酔いつぶれたので、こう平がおぶって宿舎まで運んで帰ろうとしたが、優男(やさおとこ)の力不足で適(かな)わず、見兼ねた大橋が、代わりに背負って宿まで運んでやったくらいである。

余談は置いといて、隊長である鴨野は、麓の宿屋で一晩を過ごすことに決めた。
まだ日は高かったが、これからの山越えはきつく、歩くにも時間が掛かりそうなので、まずここで、情報収集をするべきだと考えたのである。
この宿は、山を監視するスペイン提督軍の、高級士官なども良く利用するようで、結構な広さである。
中には、阿鸞と顔見知りの将校などもいて、互いに挨拶を交わしていた。

夕食は、階下の大食堂で全員一斉に取る事にしたが、その食事中、阿鸞の元に、一人の将校らしき人物が近づいてきてこう言った。
『おい阿鸞、大分羽振りがいいようだな・・・』
話し掛けてきた男は、人を睨め回すような目つきをしていて、いかにも抜け目が無く狡猾そうだ。
阿鸞は、その男を見ると、一瞬露骨に嫌な顔をしたが、直ぐに表情を変えてこう言った。

『これはこれは、マクシー殿、手前が羽振りがいいなどとは、とんでもありませんよ。』
『ふん、どうだかな、何でも提督に言いつけられて、この日本人達を、案内してるらしいじゃないか?』
マクシーと呼ばれた男は、オスカル提督の目付将校である。
提督の理非曲直(りひきょくちょく)の全てを、本国に通報する役目で、例えオスカルと云えども、彼には一目置く存在であると云えよう。

マクシーは、オスカル提督達のこの度の歓迎パーティーといい、腹心の阿鸞が、そのパーティに主賓である日本人達を、こうして連れ回していることといい、直感で、何かあると感じていた。
何か事あらば、本国に通報して、オスカル提督失脚を目論(もくろ)んでいるマクシー将校である。
臭いと睨んだからこそ、偶然を装っているが、こうして彼らを付けてきたのであった。
日本人を、どうして案内しているのか問われた阿鸞は、とっさのことに、答えに窮してしまった。

『そ、それはですなあ、この方達が、呂宋焼きの陶器を研究されたいと仰せられておりまして、それを提督が後押しをして、応援されておられるのです、なにしろ日本の徳川幕府の依頼ですから・・・』
無理矢理に言い訳したが、そのようなことで納得するようなマクシーではない。
『けっ、まあいいさ、それで今から何処へ行くんだい?』
マクシーは、舌打ちをしながらも、鋭く突っ込んだ。


続く・・・


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コメント 20

萬久

マクシー?

どなたなんでしょう?
架空の人物?

>見兼ねた大橋が、代わりに背負って宿まで運んでやったくらいである。

いつぞや聞いたことがあるような事件ですな(爆



by 萬久 (2010-02-06 10:31) 

kamono

思わぬ方向に話が進んでる気がするのは私の気の回しすぎなのか?

マクシーなる御仁はオスカル提督の配下であるにもかかわらず、呂栄国での行動の全てを本国へ通報する役目、阿鸞とは同じ配下でも立場が違うのでござるか・・・

口から出任せの阿鸞・・・
作者の構想もその日の気分や思いつきで書かれるのか?
興味だけが湧きだす次回に期待!

by kamono (2010-02-06 10:50) 

押車提督

マクシー将校は、おいらよりもっと細い脚がお好きな御仁ですなw

まさかおいらの転覆を目論んでいたとは気付きまへんでしたわ#>_<


by 押車提督 (2010-02-06 11:22) 

神事屋

マクシー殿の登場ですな、アタシも安泰幌に同行すればよかったですぅ。

お蘭とお順では手も出せず、下痢に通風ではいいとこ無しですは。(激涙
by 神事屋 (2010-02-06 11:42) 

moimoi

萬久さん

>いつぞや聞いたことがあるような事件ですな(爆
ギャハハハは、この物語はフィクションですが、登場する人物や出来事は、そのままだったりします!(笑)

>マクシー?
誰よそれっ?(爆)
by moimoi (2010-02-06 11:53) 

(´ρ`)

工工工エエエエエエェェェェェェ(゚Д゚)ェェェェェェエエエエエエ工工工

マクシーさんは
部瑠互洲専門では・・・・

というか・・もう少し書きましょうよ作者様

中途半端な続き方が
ちと多くございませんか???


といってみるテスト(爆
by (´ρ`) (2010-02-06 12:02) 

moimoi

鴨野さん

>私の気の回しすぎなのか?
考え過ぎは、頭の毛にお互い良くありません(苦笑)

>阿鸞とは同じ配下でも立場が違うのでござるか・・・
<<腹心の代表格に、アランというのがいる。
中華系のフィリピン人だが、現地で雇われ、影の最高責任者として任命されていた。
外人部隊としてスペイン軍に属していたが、一時期嫌気がさして軍を辞め、出家して寺に籠って、法名を、『阿鸞』、と名乗って修行していたのだが、心境の変化で再び還俗した所を、オスカルに見いだされて再度雇用され、現在の地位に登り詰めたのである。>>(幕末ピンパブ物語 呂宋編 第十回より)
所謂、駐在組と現地採用の差ですね(笑)

>その日の気分や思いつきで書かれるのか?
全く否定は致しません!(爆)
by moimoi (2010-02-06 12:14) 

moimoi

オスカル提督さん

>マクシー将校は、おいらよりもっと細い脚がお好きな御仁ですなw
美脚王ですな!(笑)

>まさかおいらの転覆を目論んでいたとは気付きまへんでしたわ#>_<
気をつけておくれなはれ!

・・・て、この物語は読んで無いと思われるので安心でっせ-!
もう少し、悪人に書いたろ!(爆)

by moimoi (2010-02-06 12:20) 

moimoi

神事屋さん

>アタシも安泰幌に同行すればよかったですぅ。
どうせいつかは合流するのでしょう!
そうしないと終わらないので、それまでの辛抱だす!(笑)

>下痢に通風ではいいとこ無しですは
えっ、もう無いとお思いか?(爆)
by moimoi (2010-02-06 12:23) 

moimoi

とろ吉さん

>もう少し書きましょうよ作者様
多少、時間に余裕が無くなってきました!
まあ、もう一息で完結なので、頑張ってみましょう。
次回作、『ガリヴァーフィリピンをゆく』の為に・・・(爆)
by moimoi (2010-02-06 12:26) 

あらん

>『けっ、まあいいさ、それで今から何処へ行くんだい?』

本当は馬に羽が生えてる「ペペが刺す」にご案内したいのですが~。
時間もありませんので、日光江戸村ならぬ呂宋江戸混村ではいかがでしょうかあ。

この物語はこれから何処に向かうのだろうかあ~。読めん。(爆


by あらん (2010-02-06 16:37) 

moimoi

阿鸞さん

>本当は馬に羽が生えてる「ペペが刺す」にご案内したいのですが~。
馬造はもう一人前ですから、ち◯ポには毛が生えていると思いますが!(爆)

>呂宋江戸混村ではいかがでしょうかあ。
う~ん、そこまでの時代錯誤はちょっと・・・(笑)

>この物語はこれから何処に向かうのだろうかあ~。読めん。(爆
作者にも読めないです・・・(爆、爆、爆)
by moimoi (2010-02-06 17:02) 

こう平

作者さんには全てお見通しですな(笑)

マクシーさんの趣味は美脚の盗撮の様です(爆)
by こう平 (2010-02-06 18:38) 

馬造

オフィスでガキが泣き喚いております。親は知らん顔・・・・うーむ。どうした物か・・・・

弁当の泥酔姿が目に浮かびますが、飲ませたのは、なにを隠そう大橋様だったりするw

まあ、僕も何回かお注ぎいたしましたがw
by 馬造 (2010-02-06 18:49) 

山奥

>まあ、もう一息で完結なので

やっぱり急ぎ働きのつもりですね。鬼平様に伝令を出さねば・・・・(爆
by 山奥 (2010-02-06 23:38) 

菩薩

>作者さんには全てお見通しですな(笑) ②

実わ、隠し事に突っ込まれると、弱いタイプなの・・・

松五郎殿と又場殿だけ 気付いてないから まぁ~いいっか♪
by 菩薩 (2010-02-06 23:57) 

moimoi

こう平どん

>マクシーさんの趣味は美脚の盗撮の様です(爆)
次回のお楽しみですな!(笑)
まさか弁当が・・・・
続きが恐すぎる・・・(爆)
by moimoi (2010-02-07 01:44) 

moimoi

馬造さん

>親は知らん顔・・・・うーむ。どうした物か・・・・
総じてここフィリピンでは、子供に注意しないですな!?
うちの嫁は、辺り構わず引っ叩きます。
私の方が躊躇しますが、有り難いですね。
>なにを隠そう大橋様だったりするw
その現実は明日に!!(爆)
by moimoi (2010-02-07 01:48) 

moimoi

山奥屋仙兵衛さん

急ぎ働きだけです!
畜生働きは致しません!
盗みの三箇条は、守りませんと・・・!(笑)
まあ、これから盗人宿を突き止めるので、安心して下さいね!(爆)
鬼平ちゃんより、虎造の方が、もっと恐いっすよ!(大爆)
by moimoi (2010-02-07 01:55) 

moimoi

菩薩さん

>気付いてないから まぁ~いいっか♪
いやあ、ばれるのも時間の問題かもです!(笑)
ぢゃ、突っ込んでみましょうか?
大虎たちの拷問は、きついですぞ!(爆)
by moimoi (2010-02-07 01:59) 

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