幕末ピンパブ物語 呂宋編 第二十一回 『曲者参上!』 [フィクション]
赤蟻の大群には、本当に悩まされた。
どんなに噛まれようが、平気で寝ているのは、虎造くらいのものである。
見かねた萬久が松明に火を付け、その赤蟻を焼き払ったので、ようやく落ち着いて寝られることになったが、蚊に刺されたり蟻に噛まれた後が痛痒く、松五郎が調合した伊賀秘伝の痒み止めを塗って貰って、ようやくこの騒ぎが収まった。
翌朝、一行は元気よく出発したが、昼前に来て異変が起こった。
こう平が、酷い熱を出して倒れたのだ。
良庵の見立てでは、蟻に噛まれた毒で足の傷が化膿し、そこからの熱であろうということである。
良庵は、熱冷ましと化膿止めの薬を調合し、症状が少し改善したが、直ぐには歩ける状態ではない。
これでは、旅は続けられそうにはなかった。
幸いにも、まだ麓に近い段階で有る。
仕方が無いので、鴨野は弁当にある程度の食料を渡し、熱が下がり次第、二人に下山するように促して、麓の宿屋で待つように指示をした。
こうして、こう平弁当夫婦が脱落して行ったが、道はまだまだ険しく、本当に山の上に辿り着くことができるのかどうか、一行は、特に鴨野は、不安で仕方が無かった。
その日も暮れて、またその次の日が来た。
道程は決して平坦ではなく、地図もない旅なので、自分達が、一体何処にいるのかさえ分からない。
道案内の阿鸞でさえ知らないのだから、頼りは、菩薩が扮した萬久の勘ばかりである。
その偽萬久は、相も変わらず沈着冷静で、テキパキと道を進めて行く。
忍者なので当たり前なのだが、流石の鴨野も、ここに来ておかしいと思い始めた。
以前のように無駄口も叩かないし、国に残してきた奥さんや、生まれたばかりの赤ん坊の話に水を向けても、一向に、乗ってこようとはしなかった。
しかし、疑念を抱いたにしても、あからさまに問い質すわけにもいかない。
今は自分達の為に、一生懸命やってくれているのだ。
もっとも菩薩にすれば、黄金のありかを探るために、上辺だけ協力しているに過ぎないのだが・・・。
その日の夜、一行は場所を決めて、そこで野宿をしていた。
全くもって静かな夜で、平和な安眠を貪(むさぼ)り続けた一行で有る。
が、しかし、その時、闇の中を人影が走るのを、菩薩と松五郎は見逃さなかった。
素早く、跳ね上がるように起きると、二人は同時にその影に向かって飛び掛っていった。
『曲者!』
伊賀と甲賀の忍者が同じくして叫ぶと、その影は、『おのれ!』と二人の方に向き返り、分銅のついた鎖鎌のようなものを投げ掛けた。
はっと避ける、菩薩と松五郎。
と、同時に、投網を菩薩が投げつけた。
投網は見事に、その影を捕らえた。
そこを刃物を持って、松五郎が取り押さえ、首元にそれを突きつけたからたまらない。
影は、ようやく大人しくなったのである。
騒ぎを聞きつけた鴨野が、松明を持って近づいてきた。
『一体、何の騒ぎじゃ?』
『ああ、鴨野様、曲者を取り押さえましたんで・・』
松五郎が、そう言った。
『何、曲者とな?』
鴨野は驚いて、松明をあてて、そこを照らし見た。
投網の中で、一人の男がうごめいている。
(一体この男は、何者なのか?)
続く・・・
どんなに噛まれようが、平気で寝ているのは、虎造くらいのものである。
見かねた萬久が松明に火を付け、その赤蟻を焼き払ったので、ようやく落ち着いて寝られることになったが、蚊に刺されたり蟻に噛まれた後が痛痒く、松五郎が調合した伊賀秘伝の痒み止めを塗って貰って、ようやくこの騒ぎが収まった。
翌朝、一行は元気よく出発したが、昼前に来て異変が起こった。
こう平が、酷い熱を出して倒れたのだ。
良庵の見立てでは、蟻に噛まれた毒で足の傷が化膿し、そこからの熱であろうということである。
良庵は、熱冷ましと化膿止めの薬を調合し、症状が少し改善したが、直ぐには歩ける状態ではない。
これでは、旅は続けられそうにはなかった。
幸いにも、まだ麓に近い段階で有る。
仕方が無いので、鴨野は弁当にある程度の食料を渡し、熱が下がり次第、二人に下山するように促して、麓の宿屋で待つように指示をした。
こうして、こう平弁当夫婦が脱落して行ったが、道はまだまだ険しく、本当に山の上に辿り着くことができるのかどうか、一行は、特に鴨野は、不安で仕方が無かった。
その日も暮れて、またその次の日が来た。
道程は決して平坦ではなく、地図もない旅なので、自分達が、一体何処にいるのかさえ分からない。
道案内の阿鸞でさえ知らないのだから、頼りは、菩薩が扮した萬久の勘ばかりである。
その偽萬久は、相も変わらず沈着冷静で、テキパキと道を進めて行く。
忍者なので当たり前なのだが、流石の鴨野も、ここに来ておかしいと思い始めた。
以前のように無駄口も叩かないし、国に残してきた奥さんや、生まれたばかりの赤ん坊の話に水を向けても、一向に、乗ってこようとはしなかった。
しかし、疑念を抱いたにしても、あからさまに問い質すわけにもいかない。
今は自分達の為に、一生懸命やってくれているのだ。
もっとも菩薩にすれば、黄金のありかを探るために、上辺だけ協力しているに過ぎないのだが・・・。
その日の夜、一行は場所を決めて、そこで野宿をしていた。
全くもって静かな夜で、平和な安眠を貪(むさぼ)り続けた一行で有る。
が、しかし、その時、闇の中を人影が走るのを、菩薩と松五郎は見逃さなかった。
素早く、跳ね上がるように起きると、二人は同時にその影に向かって飛び掛っていった。
『曲者!』
伊賀と甲賀の忍者が同じくして叫ぶと、その影は、『おのれ!』と二人の方に向き返り、分銅のついた鎖鎌のようなものを投げ掛けた。
はっと避ける、菩薩と松五郎。
と、同時に、投網を菩薩が投げつけた。
投網は見事に、その影を捕らえた。
そこを刃物を持って、松五郎が取り押さえ、首元にそれを突きつけたからたまらない。
影は、ようやく大人しくなったのである。
騒ぎを聞きつけた鴨野が、松明を持って近づいてきた。
『一体、何の騒ぎじゃ?』
『ああ、鴨野様、曲者を取り押さえましたんで・・』
松五郎が、そう言った。
『何、曲者とな?』
鴨野は驚いて、松明をあてて、そこを照らし見た。
投網の中で、一人の男がうごめいている。
(一体この男は、何者なのか?)
続く・・・
2010-02-14 03:56
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コメント(16)
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蟻に噛まれてあそこも腫れ上がり下山しました(爆)
新たな登場人物。
一体誰なんでしょうか?
楽しみです↑(^^_)ルン♪
by こう平 (2010-02-14 05:27)
あああ!
一番乗りとられてしもたw
いやあ、お腹の調子が悪いです。熱も少しあるようです。
新しい登場人物は誰なのか?そして、この物語に落ちはあるのか?
乞うご期待w
by 馬造 (2010-02-14 05:44)
こう平どん
>蟻に噛まれてあそこも腫れ上がり下山しました(爆)
弁当が、さぞかし喜んだでしょうね!(爆)
>新たな登場人物。
単なる端役かも・・・(謎?)
by moimoi (2010-02-14 08:34)
馬造どん
>一番乗りとられてしもたw
よく見ると、前回の記事にコメント入っていませんでしたね。(悪魔の怒り)
こりは多分、崖から転落の刑ですな!(笑)
>いやあ、お腹の調子が悪いです。熱も少しあるようです。
しかし今回は、病気に免じて許して上げましょう。(天使の微笑み)
>この物語に落ちはあるのか?
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ、作者が一番気にしていることを平気で言いやがる!(爆)
by moimoi (2010-02-14 08:39)
時代劇さながらの立ち回りですな、 って時代劇ですたね、キャストの殆んどの方を存じ上げているものですから錯誤いたしました。(笑
by 神事屋 (2010-02-14 10:47)
神事屋殿
>時代劇さながらの立ち回りですな、 って時代劇ですたね
もう少し、詳細を表現出来ればいいのですが、そこまでの文才と知識がないので無理です。(苦笑)
>錯誤いたしました。
倒錯の世界ですな!(爆)
by moimoi (2010-02-14 11:20)
おお!
今回は物語らしく次の展開を楽しみにさせる終わり方でしたね!
でも月曜日に更新があるのかそれが心配ですが
果たしてどうなるのか?
次回をお楽しみにですな!
by 萬久 (2010-02-14 11:42)
いよいよ
弁当光芒太子の登場か!!
(゚∀゚)ほほ
期待しとこっ
by (´ρ`) (2010-02-14 12:01)
萬久さん
>次の展開を楽しみにさせる終わり方でしたね!
え~、いつもはそうじゃないのね!?(苦笑)
月曜日からは、いつものように毎日の更新を目指します。
・・・が、これも仕事次第ですね。
今の内に、記事を貯めておこうっと!(爆)
by moimoi (2010-02-14 12:20)
とろ吉どん
>弁当光芒太子の登場か!!
う~ん、期待に添えるかどうか・・・(謎)
>期待しとこっ
そこに期待しないで、物語に期待してよ!(苦笑)
by moimoi (2010-02-14 12:23)
面白い展開になってきました・・・(ワクワク!
ただ菩薩氏と萬久氏の一人二役に少々合点がいかぬが・・・(プッ
萬久氏は国許の奥方とつまらぬ誤解で揉め事が・・・(笑
>『何、曲者とな?』
誰なのか興味の湧く瞬間が・・・(ドキドキ!
by kamono (2010-02-14 12:28)
ついに登場か?
竹垣内駅弁光忘大師・・・・・・
ではないよね(笑)
↑の手下でスダレ髪の爺というものが捕らえられた!
これで決まりだな!
by タイガー大橋 (2010-02-14 12:38)
鴨野さん
>萬久氏は国許の奥方とつまらぬ誤解で揉め事が・・・
リアルですな!(笑)
今頃は、幽閉先の野菜商人の家の一室で、しくしく泣いていることでしょう。
>誰なのか興味の湧く瞬間が・・・(ドキドキ!
う~ん、困った!
単なる端役なのだが、ここまで期待されると・・・(爆)
by moimoi (2010-02-14 14:50)
タイガー大橋どん
>ではないよね(笑)
当たり前でごんす!(苦笑)
>手下でスダレ髪の爺というものが捕らえられた!
ギャー!
崖下転落の刑は、おまいさんじゃー!(爆)
by moimoi (2010-02-14 14:52)
今回で、偽萬久の正体がバレ×2ですな(笑
う~ん・・・困った、
これから数日間は、ブログを拝見できないし、コメントもできない(爆
でも~日本に帰ってきた時は、どうなってるか楽しみぃ~♪
by 菩薩 (2010-02-14 16:46)
菩薩殿
>これから数日間は、ブログを拝見できないし、コメントもできない
あ”~~~~~~~~~~!
忘れて居りました!
明日からでしたね!
お待ちしています。
取り敢えず、明日は空けて置きますので、連絡を下され!(笑)
その時に、今後のストーリーもこっそりと・・・(爆)
by moimoi (2010-02-14 17:04)